突然ですがテストで計算ミスをしてしまったこと、計算をしている途中で解きかけの答案用紙を回収されてしまったことはありませんか?算数の勉強をする上で、いかなる単元でも足し算や引き算、かけ算にわり算といった計算は欠かせないです。どんなに勉強を頑張っても、計算の部分で点数をこぼしてしまうのはもったいないですよね。
今回はこのような「計算」に関する問題を解決する一つのテクニックとして「インド式掛け算」を解説いたします。このテクニックを覚えておくと、2桁×2桁のかけ算があっという間にできるようになり、ケアレスミスも減らす事が出来ます。
中学受験で登場する掛け算
冒頭でも触れた通り、今回は2桁×2桁の掛算を簡単にこなせるようになる技術をご紹介いたしますが、まずは中学受験のどんなところでこのようなかけ算がみられるかを実際に見てみます。このページを見ている人はまず試しに次の問題を解いてみましょう。
次の計算をしなさい。(お茶の水女子大学附属中学校(2018), 一部改題)
\(3.8\times7.2+5\times7.2+6.2\times7.2\)
このような問題で2桁×2桁のかけ算が見られるのです。中学入試の問題といえば頭を使う・知恵を絞るような問題が出されると考えられる保護者の方もいらっしゃると思います。もちろんそのようなものが大半を占めているのですが、だからこそかけ算のような単純な計算に時間を取られていると、ライバルたちに差をつけられてしまうのです。
この差を計算力で埋める、それどころか計算の部分で周りに差をつけるテクニックとなるのが「インド式かけ算」です。この技術を次節で紹介します。ちなみに上の問題は因数分解を使うと次のように簡単に直すことが出来ます。
\(3.8\times7.2+5\times7.2+6.2\times7.2=(3.8+5+6.2)\times7.2=15\times7.2=□\)
ここまで式を簡単にすれば、一番初めの問題でつまずいていた人も、もしかしたら答えが出せるかもしれません。この因数分解(共通因数で括るとも、学校や塾で3.14の計算は最後にまとめてやろう!と言われるアレです)というテクニックを使うだけで計算がとても簡単になるので、やはり中学受験には知っておくべき事柄はあるのでしょう。
しかしテストは1分1秒が勝負です。もちろん因数分解をして、その後に「インド式かけ算」で間違いなく早く計算することが理想です。しかし因数分解を覚えているのに15×7.2の計算で時間がかかる・あるいは点数をこぼしてしまう人より、因数分解がたとえできなくても3.8×7.2,5×7.2,6.2×7.2を誰よりも早く計算してしっかり点を稼ぐ人が有利なのは間違いありません。
それでは受験における計算力の重要性を理解いただけたところで「インド式かけ算」を一緒に学んでいきましょう!上の問題の答えは,「インド式かけ算」を勉強した後に第3節で改めて解いて確認することにしましょう。
「インド式計算」とは
以下では「インド式かけ算」による2桁×2桁の計算に取り組んでいきます。次のような問題があったとしましょう。
\(47\times62=□\)
おそらくこの問題を解くときにほとんどの人が筆算を使うと思います。実は「インド式かけ算」とは筆算を簡単に行う方法を指すのですが、まずは小学校で習う計算の仕方で解いてみます。
\(\begin{array}{rr}&47\\ \times&62\\ \hline &94\\ &282\space\space\\ \hline &2914 \end{array}\)
答えが2914になりました。受験を目指されている方はもしかしたら一瞬で解けてまったかもしれませんが、くり上がりが3回もあり、受験本番でも正しい答えが出せるかといわれると、ほとんどの人が首を縦に振るのは難しいのではないでしょうか。繰り返しになりますが、上のような計算をミスなく早くこなすためのテクニックが「インド式かけ算」です。
では実際に「インド式かけ算」で47×62を解いてみましょう。まず通常の筆算のように2つの数を並べ,十の位の数×十の位の数,一の位の数×一の位の数を計算し,次のように書きます。今回では十の位の数は4と6なので書く数は24,一の位の数は7と2なので書く数は14になります。
\(\begin{array}{rr} &47\\ \times &62\\ \hline &2414 \end{array}\)
ここまで出来たら、次に上の数の一の位の数×下の数の十の位の数,上の数の十の位の数×下の数の一の位の数を計算し,下のように書きます。ここでは上の数の一の位の数が7で下の数の十の位の数が6なので書く数は42となります。今回は上の数の十の位が4で下の数の一の位の数が2のため書く数は8になります。このときの位取りが重要なので間違えないようにしましょう。
\(\begin{array}{rr} &47\\ \times &62\\ \hline &2414\\ &42\:\,\\ &08\:\,\end{array}\)
後は求めた数字を次のように足すだけです。
\(\begin{array}{rr} &47\\ \times &62\\ \hline &2414\\ &42\:\,\\ &08\:\,\\ \hline &2914 \end{array}\)
このようにして2914という答えを導くことが出来ました。これが「インド式かけ算」による2桁×2桁の計算手順になります。くり上がりが最後の足し算にしかないためミスしうる箇所が少ないことが特徴です。全部の数の組み合わせをかけ算するだけなので、とても簡単に素早く計算を行うことが出来ます。では改めて計算手順をおさらいしておきましょう。
- 通常の筆算のように2つの数を縦に並べて書く。
- 十の位同士、一の位同士をかけ算し、4桁の数が出来るように書く。
- 上の数の十の位と下の数の一の位、上の数の一の位と下の数の十の位をかけ算する。
- 位取りを間違えないようにし、百の位と十の位の欄に計算した数を書く。
- 求めた数をすべて足す。
「インド式」かけ算の実践
では「インド式かけ算」のテクニックを理解して頂けたところで、改めて最初に出題したかけ算の問題を解いていきましょう。
\(3.8\times7.2+5\times7.2+6.2\times7.2\)
これを整理すると15×7.2となりましたね。小数のかけ算は、一度小数点を除去し、答えの最後に小数点をつけ直すことで計算できるので、もちろん「インド式」計算のテクニックを使うことができます。
\(\begin{array}{rr} &15\\ \times &7.2\\ \hline &071.0\\ &35.\:\,\\ &02.\:\,\\ \hline &108.0 \end{array}\)
したがってこの問題の答えは「108」となります。おそらくこれまでの筆算より簡単に解答できたのではないでしょうか。将来的には15×7.2という計算を見たら瞬時に71.0・35.0・2.0という3つの数字を浮かべ、これらを足す、と頭の中でかけ算を完結させることも期待できるでしょう。よろしければ色々な計算に触れ「インド式かけ算」のテクニックを身に着けてみてください。
(ライター:大舘)
参考:”インド式数学で計算しよう”. 最終アクセス:2020/10/08