授業中に白熱した議論!中学校時代の恩師から学ぶ「上手い説明の仕方」とは

はじめに

私の人生で、最も説明が上手いと思った人は中学校のときの社会科の先生でした。

これまで多くの塾や学校で、私はたくさんの良い先生方に恵まれてきたほうだと思います。

その中でも特に上手だと思った、その先生の授業について紹介します。

生徒のタメになる授業

私の出身校は、もとより授業中に議論を大事にする学校でした。

ちょっとした疑問でも大切にし、授業の時間を割いてしっかりと納得がいくまで議論を続ける、そんなちょっと不思議なところです。

その学校でも特に、社会科の先生方はより特徴的な授業をしてくれました。

その中でも印象的な授業は、「九州と北海道、どちらかを手放さなければならないならばどちらを手放すか」という議題を提示し、実際に2時間ほど使い双方に分かれて議論するといったものです。

もちろん、その議題はたとえ話だと分かっていても、先程紹介したような学校なので皆が揃って議論に熱中しました。この授業を受けてから、私の授業に対する意識が大きく変わりました。

ここまで紹介しただけの情報だと、説明が上手いエピソードではなく、ただ議論させただけにしか思えないと思います。

しかし、この先生の素晴らしいところは、ただ完全に投げるだけではない事です。

司会者は先生が務め、最初はちょっと過激な意見を煽り、あえてお互いに反論の余地が残るような意見を引き出して議論を活発化させます。

場の熱が高まってきたのを見てから、過熱し過ぎないように新しい事実を提示し、流れをコントロールする。

そういった形で授業をコントロールする技は並大抵の先生では出来ないと思います。

そして、この先生の授業で「意識が大きく変わった」とまで言う理由はこのコントロール技術にあります。

学級にいる40人がどんな意見を出すのか、先生の頭の中ではある程度想定されていて、自分たちは気付かない内に先生の思い通りに議論を進めている。

そのことに気付かされたときの衝撃は言うまでもないでしょう。

これだけ生徒を主役にした授業を展開しながら、肝心なところはきちんと先生が制御し、授業を通して教えたいテーマについては漏らすことなく教え切ってしまう、その技術は並大抵の人では真似できない、と強く思いました。

結局、この授業はお互いに意見が出尽くして、結論が出ないまま時間切れになりました。

その後、先生が授業で出た意見についてまとめ、エビデンスとして提示した事実について必要があれば解説を加えるなどして、その時間は終わり。

せっかく議論したのだからどちらかの結論を出したい、という気持ちも多少はありましたが、それでもその時間の授業は未だに脳裏にしっかりと残っています。

生徒が主役

私がこの先生の授業を強く推す理由は、自分たちが学んでいるという実感を持たせ、そして授業の主役は自分たちなのだという自尊心を芽生えさせることに特化しているからです。

色んな所で、さまざまなものについての指導を受ける場面というのは多々あると思います。今に至るまで、様々な人から授業や、あるいは指導を受けてきました。

しかし、教えてもらっているときの心境というのは得てして受け身になってしまいます。

自発的に受けた講義や講演会ですら、最初の熱意を維持し続けるということは難しく、ただ聞いているだけで考えることをしない、という状況に陥ることがよくあります。

しかしながら、この先生が取った方式であれば常に自分で考え、授業を進めていく必要があります。

もちろん、それを先生がある程度コントロールしているといえど、自分の意見が授業を前進させているという感覚は何事にも代えがたいものでした。

この授業方式を取って、多くの生徒を魅了した先生の力には未だに感服するものがあります。

こういった経験をしたことで、そのクラスでは他の授業でも発表を積極的にするようになりました。

私は元から積極的な発表をするようにしていましたが、この先生の授業のおかげでクラスの雰囲気が変わったというのを強く感じました。

真に身につく授業とは

さて、ここまで私が経験した、最も面白く、上手いと思わされた授業のお話をしました。

その上で、改めて考えてみたいのが上手い教え方、説明の仕方というのは一体どういうものを指すのでしょうかということです。

ここで挙げた、最も上手いと思わされたエピソードはあくまで一つの例で、実際のところ様々な答えがあるように思います。

単純な話術で上手い説明というのもあれば、あるいは伝え方やツールの使い方が上手というのもあるかと思います。

しかしながら、そのどれもに共通するのは「教える人のためを思っている」という事だと思います。

独りよがりな、自分が分かればいい、あるいは自分がやりやすいという事しか考えていない説明というのは、どうしても落とし穴に陥りがちです。

この先生を例にとると、少なくとも議論をさせるというのは時間もかかり、あるいは予想外の意見が飛び交うことも当然あるわけで、一見すれば遠回りな方法を取っていると思います。

しかしながら、この授業をしてくれたおかげで多くの生徒がそれをしっかりと覚えて帰り、それだけにとどまらずその後のクラスの空気を変えることにもつながっています。

そう考えると、一見遠回りなことであってもとても大事なことだったのだと思います。

先生との思い出

ここまで先生の授業について紹介しましたが、ここからは少し授業の話から少し離れて、その先生との思い出についてお話します。

先生はあるときの授業前に「君たちの授業をするのは、本当に大変だ」という話をしました。

こういった授業をする以上、やはりかなり大変な思いでしていたようでした。しかし、それでもこの先生はそういうことをいいながらも、常に笑っていました。

そして更にある時、先生はこれまでのまとめとしてプリントを配って授業を終わりにしようとしました。

私はその時に、「こんな味気ない授業は面白くない」といったことをその先生に言いました。

今思えば、あんな喧嘩を売るような言葉を先生に言った私の身の程知らずさは言うまでもないですが、それでも当時の私は先生の授業が好きで、この日も議論がしたくてウズウズしていました。

その結果、なんと先生は私に授業を任せてくれました。先生がやった司会者の役目を任され、自分が主導して授業をする、中学生の自分には刺激的な経験でした。

結果、この経験がより先生の凄さを際立たせることになったのは言うまでもないです。

意見を予想し、必要に応じてコントロールする、これができるのは本当に卓越した技能なのだという事を身を以て学びました。

余談にはなりますが、このときの「味気ない」という発言は未だに覚えられているようでした。

同窓会に招待しようと、先生に電話したときにもこの話をされるぐらいには、先生に衝撃を与えた発言だったようです。

まとめ

元々、この先生の授業を受ける前から発表を積極的にするようにしていましたが、この授業を経てからより積極的に意見を出すようになりました。

そういう意味で、この先生の授業は私の価値観、人生を変えたとも言えるでしょう。

そして、先生もまた私達の授業で色々学べたという話を卒業の際にしてくれました。

人に衝撃を与えるだけの経験を与えるとき、もしかしたら先生もまた何か感じるものがあったのかもしれない、そう思えました。

こんな先生の授業を受けたという経験は、何事にも代えがたいものです。

今後、もし私がこういった立場につくことがあれば、ぜひともこの先生のように価値観に影響を与えるような授業がしてみたいですね。

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慶應義塾大学の中村駿作です。 塾講師として2年間、主に国語と社会科を担当しています。特に現代文と政治経済科目には自信があるので、記事もそういった科目を中心に取り扱っていこうと思います。勉強方法が分からないという声も多い国語や、あまり重要視されないお陰で勉強し辛い倫理・政治経済といった科目の理解を深められるような解説を心がけます。また、中学受験と高校受験のどちらも経験しているため、そのときの知識や経験を元にした解説も行えたらと考えています。普段は趣味でスポーツ、とくに海外サッカーとF1を見ています。ヨーロッパやアメリカの昼間に行われているお陰で、日本で見ようとすると夜ふかししなければいけないのが身体に毒ですが、それでもやめられないです。その他、空いた時間に小説を書くことやトレーディングカードゲームをプレイすることも趣味の一つです。