ポイントは順序立てて通貨の比を丁寧に処理していくこと!為替問題の解き方

今回の記事では比の計算の範囲として出題されやすい,為替の関係について説明していきます。この範囲はそもそも「為替ってなに?」という疑問からじっくり解消していかないと知識が定着しにくいので,受験生が苦戦しやすいです。そこで今回は,為替を理解するために円高・円安という例を取り上げることから始め,入試問題の攻略法までを解説していきます。

為替とは?

まずは為替とは何かを確認していきますが,そのために具体例の一つである円高・円安について最初に押さえていきましょう。多くの受験生は聞いたことがあるでしょうが,円高・円安とは円の価値のことを指します。しかし円の価値と言われてもなかなかピンとこないものです。そもそも私たちは普段の生活でモノの価格,つまりモノの価値を表すものさしのことをお金という手段で表していますね。例えばスーパーでりんごが売られていたとして,100円の価値があるりんごには1個100円と,200円の価値があるりんごには1個200円と値札がつけられていたりします。これだとまだ分かりづらいので言い換えると,100円のりんごより200円のりんごのほうが高くて良いモノであるということを,私たちはお金という基準によって知ることができるのです。もちろんこの良し悪しは比べる対象によって変わってきます。100円のりんごと80円のりんごを比べたら100円の方が高くて良いモノになりますし,200円のりんごと300円のりんごを比べたら300円の方が高くて良いモノになります。もちろん全ての事柄が金額で測れるわけではないですが,円の価値を考える大前提として,お金はモノの価値のものさしになっているということ,そして価値は比べる対象によって変わるということを確認しておきましょう。

そしてここからはモノの価値から派生して円の価値について考えていくことにします。上の文章でお金はモノの価値のものさしになっているという話をしましたが,この「お金」とは1種類しかないものではありません。この世には円・ドル・元・ユーロ・ウォンなどなどたくさんの種類のものがありますよね。そしてそれぞれの地域で使われるお金の種類は決まっているため,例えば外国で買い物や旅行などをするときには,日本の円を他のお金に交換する必要があるわけです。

しかしこの通貨というのは1円=1ドルなどというように価値の関係が決まっているわけではありません。りんごの例と同様に,それぞれの通貨にもそれぞれの価値があるのです。例えばりんごは新鮮さ・見た目・美味しさなどで価値=値段が変わりますが,通貨に関しても,その通貨が使われている国の景気がいいか悪いか,政治が安定しているかいないか,などを原因に価値が変化してしまうのです。そのため通貨同士の交換のとき,他の通貨が1円でどれくらい手に入るかは常に変わり,その値を示すのが円の価値というものになります。このときの「どれくらい手に入るか」は比率で表され,その比を為替相場または為替レートといったりしますが,例えば1円=1ドルだとしたら1円には1ドルを手に入れるだけの価値があるということになり,1円=2ドルだったら1円には2ドルを手に入れるだけの価値があるということになります。

そして1円=1ドルの場合と1円=2ドルの場合を比べたとき,2ドルのときの方がより多くのドルに円を変換できますよね。そのため1円=2ドルの方が1円=1ドルの場合に比べて円の価値が高い,つまり円高だといえるわけです。反対に1円=1ドルの方が1円=2ドルの場合に比べて円の価値が低い,つまり円安だといえるわけです。このときの高い・安いについても,基準によっては違うことが言えてしまいます。例えば1円=2ドルの場合と1円=3ドルの場合を比べると,1円=2ドルの方が円の価値は低い=円安になるわけですし,1円=3ドルの方が円の価値は高い=円高になるわけです。このように円の価値についても,比べる指標によって変わってくるということを覚えておきましょう。

そしてここで触れたのは円とドルの関係であり,私たちは円を使う国に生きているので円を中心に円高・円安という話をしていますが,この関係はドル・ユーロなどのどんな通貨でも当てはまることです。そうしたたくさんの通貨における,他の通貨との価値を表した数値のことが,ここでご紹介している為替だとも言えますね。

なぜ為替相場の問題が出題されやすい?

それでは為替とは何かを解説したところで,次はなぜこの範囲が算数で出題されるのか,またなぜ算数の分野として勉強しなければならないのかを説明していきます。上の為替ならびに円の価値についての解説をご覧いただいて感じたかもしれませんが,この範囲というものは算数と一見関連がないように思えるかもしれません。実際この範囲は社会科で出題されることの方が多く,例えば円高だと・円安だとどういうメリットがあるのか,といったような問題が登場しがちです。

しかし先ほど説明したように,為替とは通貨と通貨の価値の関係を比で表したものでした。そのため小学校で習う算数のうち,割合と比という単元からの出題が考えられるのです。そして為替というのは数字を並べた単なる比率というよりは,為替という比に込められた意味まで分かっていないと理解することが難しいものです。もし「為替とは」「円高・円安とは」という単語の意味まで学んでいないと,そもそも問題文が読み解けず計算に進むことができない可能性もあります。そのためこの為替という範囲は計算力と知識の両方を試す壁になり,多くの受験生をふるいにかけることができるため出題されるということなのです。そしてこのような壁を乗り越えて周りの受験生に差をつけるために,算数の受験結果に関係なさそうな為替を勉強しなければなりません。

とはいっても,やはり多くの小学生にとって通貨の価値というものをきちんと理解しきることは簡単ではありません。そのため本質を先に理解するというよりは,問題を解きながら意味に慣れていくというプロセスで学習していくといいでしょう。

入試問題を解いてみよう!

ここからは入試問題で為替がどう登場するのか,またどう攻略していけばいいのかを解説していきます。ここでは実際に出題された入試問題を例に考え方や解き方を説明していくのですが,まずは自分の力で問題が解けるかどうか,一度チャレンジしてみてください。

次の□にあてはまる数を求めなさい。

あるとき1ドルは119円で,1ユーロは148円でした。このとき,100ドル=□ユーロです。小数第1位を四捨五入して整数で答えてください。

(関東学院中学校(2015),一部改題)

解説

それでは先ほど引用した例題の解説をしつつ,為替問題全般の攻略のポイントをご紹介していきます。まず問題を解く上で念頭に置いておきたいのは,単純な比の関係や倍数の関係で問題を解くことはできないということです。今回の問題だとドルとユーロの関係が求められていて,問題文においてそれらの通貨と円の価値の比率が挙げられていますが,この2つの1ドル=119円・1ユーロ=148円という数値をそのまま計算に用いることはまずないと言っていいでしょう。そのため重要になってくるのが,比の基準を逆にしたりすることで情報を別の形にすることになります。

例えば文章中にあるように1ドル=119円のとき,つまりドルと円の価値の比率が1ドル:119円のとき,両辺を119で割ると1円の価値を1円=1/119ドルだと導くことができますね。同様に1ユーロ=148円のとき,つまりユーロと円の価値の比率が1ユーロ:148円のとき,両辺を148で割ると1円=1/148ユーロだと導くことができます。このように与えられた比の形を変えていくことが,為替問題を攻略する鍵になります。

そしていま100ドルが何ユーロかを計算したいわけですが,そのためには1ドルが何ユーロかを求め,その数を100倍すればいいことが分かります。ここで1ドル=119円であることから,1円が何ユーロか分かれば上の100倍の関係から答えに辿り着くことができそうです。先ほど計算したように1円=1/148ユーロだったことを考えると,1ドル=119円=119×1/148ユーロという計算式が出来上がり,したがって1ドル=119/148ユーロだと求められました。この分数には分子と分母に共通する約数がないので約分ができないことが厄介ではありますが,ひとまず無事ドルとユーロの関係を整理することができました。

そしてこれを100倍してみると,100ドル=11900/148ユーロとなります。ここで今回の問題は小数第一位を四捨五入する形式で答えを出すように言われているので,計算ミスを起こさないように11900÷148を計算すると,80.405…となるので,答えは80ユーロとなります。この為替というのは分数の形で表される機会が少ないのでほとんどの問題で小数の登場する割り算が必須になるでしょう。そのため比の整理が終わっても油断せず,きちんと答えを導くところまで集中を切らさないようにすることも,為替問題を解くポイントだと言えるでしょう。

A.80ユーロ

終わりに

今回の記事では,比の分野として出題される傾向にある為替問題について解説していきました。この分野は計算がとても難解というよりは,使われる言葉の指す意味が分かりづらいことから文章を読み解くのに苦戦しやすいです。そのため周りの大人が根気強くサポートしながら,たくさんの演習を積むことで経験を積んでいく必要があります。よろしければ以下のおすすめ記事や参考書籍も活用しながら,合格に向けて更なる勉強を積んでいきましょう。

(ライター:大舘)

おすすめ記事

参考

中学受験生のお母さん向け無料メールマガジン

    本サイトの監修者である、開成番長こと繁田和貴が執筆する無料メルマガは、その内容の濃さから6000人以上の読者に愛読されています!

    登録も解除も簡単にできますので、まずはお気軽にご登録ください。

                                

「開成番長・繁田の両親が語る繁田の中学受験PDF」プレゼント!

無料メルマガ登録