新しく受験学年をむかえた新・受験生の皆さん、受験勉強を始めた、あるいはこれからお考えの低学年の皆さん、算数で一番お悩みのことは何でしょうか。
難しい問題が解けない、何度同じような問題を解いてもいつも間違える、などいろいろあると思います。その対策としては、解法をしっかり理解することが必要ですが、それ以前に、「どのような間違い方をしているか」ということをしっかり把握しておくことが必要です。
算数の間違いというと、答えを間違えること、答えに至るまでのプロセスで考え方を間違えていること、ということが代表的なものですが、「なぜ間違えたのか」「どのような間違い方をしているのか」ということを把握せずに、ただやみくもに問題だけたくさん解いても、さらに間違いを重ねるだけになってしまいます。
特に、よくご相談を受ける内容として、「うちの子、ケアレスミスが本当に多くて・・・」ということがあります。「ケアレスミス」とは本来不注意によるものですが、その不注意にもお子さんごとのクセやパターンがあります。そのクセやパターンを早いうちに見つけることが、受験対策をするうえでとても重要になってきます。
また、「ケアレスミス」というと「大したことないミス」だから「今度から気をつければいい」と軽く考えがちです。ですが、そのような「大したことないミス」と思われがちなものであっても、ミスはミスです。チリも積もれば山となり、模試やテストで「これさえ間違っていなければあと何点取れたのに」と後悔する原因になるのです。中には30点、40点にもなるということもあります。そういうことを繰り返していては、成績を上げるのは難しいですよね。
ケアレスミスは算数に限ったことではありません。ほかの教科でも記号や字の書き間違いをはじめ、悩まされるもとになります。4教科で作ったケアレスミスの山は、どんなに難問の解法を知っていても、そこで得点できた点数を帳消しにしてしまうことになりかねません。
中学受験での目標は、最終的には入試で合格点をとることですが、そこに至るまでに経験する模試やテストで、制限時間内に、いかに実力を出し切ることができるかという練習を積むことが重要です。今回は、実力を出し切ることができる大切なポイントとなる「ケアレスミス」をいかになくしていくか、その方法について書いていきたいと思います。
Contents
ケアレスミスをなくす方法①基礎的な問題を確実に得点する意識を持つ
ケアレスミスをしてしまうのはどのような場合だと思いますか?これはお子さんによって違いはありますが、算数の場合には、計算ミスや単位換算が正確でないことによって生じるていることが多いと思います。どのような難問でも、最終的には計算に持ち込んで解答を出すことになりますが、まず目を向けるべきは、正答率の高い、基礎的な問題、つまり「みんなが確実に正解してくる問題」で確実に得点できるようにすることです。
難問は配点も高く、たしかに差がつきますが、「基礎的な問題を落とさない」ことが確実に得点を伸ばすポイントです。そのような問題を正解して、さらに難しい問題に取り組んでいき、そこでもケアレスミスをしないよう意識していくことによって得点力が上がっていきます。そのためには、問題を解くプロセスの中で工夫をすることが必要です。たとえば、以下のような工夫です。
計算問題は暗算に頼らない
計算問題を軽視していると、計算をするときに式を飛ばし、答えだけを暗算で出そうとするお子さんがいます。もちろん、解いていく途中で暗算が必要になることはありますが、それだけに頼るべきではありません。ごくまれに、最上位生の中には、頭の中で問題の解法のプロセスを考え、正答まで出して一気に答案に書いて正解する、という生徒さんもいますが、それは例外的です。あくまで愚直に計算を正解する方法を実行していきましょう。
もし、計算問題や、解答までの途中式でミスを繰り返して点数を落としているようなら、暗算に頼るのではなく、途中式をていねいに、プロセスの順番に大きな字で書いていき、自分が見直す際に、どのように答えを出したのか、そのプロセスが目で見てわかるようにしておきましょう。
よく、テストの問題用紙の狭いスペースのあちらこちらに1問の計算を書き散らかしているお子さんがいらっしゃいます。お子さんは大丈夫でしょうか?あちらこちらに書き散らかしていると、どのようにその問題を解いたのか後で見直そうとしても順番がわからなくなりますし、場合によってはその問題の計算なのかどうかも分からなくなってしまいます。
一度、お子さんのテストの問題用紙を見てみてください。式も立てずに筆算だけ書いていたりしていないでしょうか?計算問題でも、文章題、図形問題でも、最終的には計算に持ち込んで解答を出していくことになります。入試レベルになると、いくつも式を立て、複雑な計算を速く正確にしていかなければなりません。模試やテストのときも同じです。
本番ではないからと、計算を書き散らしている場合には、途中式をていねいに書き、少なくとも自分が「見直し」をできるように、間違っていたらその箇所がわかるようにしておくようにする習慣をつけることが大切です。特に受験学年の方は、学年が変わる今が計算のやり方を見直し、正確にできるように訓練するチャンスです。
単位換算を正確にする
問題を解く際には、単位換算を一瞬でできるようにしていかなければなりません。図形、長さ、速さ、比と割合の問題など、すべての単元に関わってきます。もちろん、単位換算だけを集めた計算問題も出題されることがあります。
これは、数量を把握する能力がとても重要になってきますが、単位換算を苦手とするお子さんは、単位と数の大きさを見ても、どちらが大きくてどちらが小さいか、多いか少ないか、がわかりません。ですから、「どう見てもこちらの方が大きいでしょう」という場合でも、違う方を選んでしまったりします。
時間の問題では、「時間」「分」「秒」などが絡み合いますし、水量の問題では「リットル」「デシリットル」「㎤」「㎥」などいろいろな単位が出てきます。単位換算の知識が正確でないと、時間がかかるばかりで、答えにたどり着くことができなくなります。
本当に基礎中の基礎ですが、こういったところをおろそかにすると、つまずく時期が必ずやってきます。今のうちに正確に単位を自由自在に使えるようにしておきましょう。
図形問題では、数値や補助線を図に正しく書き込む習慣をつける
図形問題が苦手、という方の問題用紙を見ると、問題に出ている図形が真っ白、ということがよくあります。問題文に出てきた数値が書き込まれていなかったり、補助線を引いていなかったり、といったことが代表的です。
ですが、それは問題文をきちんと読むことができていない、そして出てきた数字や記号を正確に把握できていないということです。補助線もそうですが、図に書き込む習慣がないと、せっかく問題文に示されているヒントを自分から捨てているようなものです。
問題文を読みながらでてきた数値を書き込む、どの長さを求めるのか、体積を求めるのか面積を求めるのか問題文に線を引く、自分の知っている知識に持ち込めないかどうか補助線を引いてみることをていねいにできてこそ、「解くきっかけ」を見つけることができます。
問題文にあるヒントを正しい場所にしっかり書き込んでいくと、少なくともどこから解いたらよいのかが見えてきます。「手を動かす」ことを面倒くさがらずにやってみることが大切です。
このようなことに気をつけて問題に取り組むと、「勘違いによるミス」「ケアレスミス」は大幅に減らすことができます。
ケアレスミスをなくす方法②よく間違えるパターンを知る
先ほどご紹介したような、計算の仕方や単位換算、問題文のヒントを図に書き込むなどのほかにも、いろいろな工夫をすることによってケアレスミスをなくすことができます。その中でも大切なことは、「自分がよく間違えるパターンを知っておく」ことです。
どのようにそのような「間違いパターン」を見つければよいのでしょうか。模試やテストを受験する回数が増えてくると、同じような間違いパターンを見つけることができるようになってきます。
特に、問題を解く際に、以下のような工夫を普段からするように心がけておくと、自分がいつもどのような箇所、どのような問題、どのような計算で間違えやすいのかが見つけやすくなります。
- 途中式をていねいに書く
- 解く問題に優先順位をつけておく
- 時間配分に気をつける
このような習慣ができていると、たとえば、「いつも字を小さく書く習慣があって、自分が書いた途中式の数字を読み違えてしまって計算ミスが増えている」「急ぎすぎてしまって単位換算をするときにケタを間違えてしまう」「全部の問題に無理に手をつけようとして前半の易しい問題で落としてしまっている」などの、自分なりの「間違いパターン」が見えてきます。
このような「間違えやすいパターン」は、ほとんどのお子さんが1つに限らず複数持っていることが多いです。これは上位生といわれるお子さんでも同じことです。上位の成績をおさめているお子さんは、その「間違いパターン」を知ったうえで、それをどう克服するか自分なりに考え、注意して同じ間違いをしないようにするという意識を持つことができているから上位にいるのです。そんなお子さんでも、やはりいくつかは「間違いパターン」をもっているものです。
「間違いパターン」を克服するためには?
いくら普段の学習で問題演習をたくさんしても、模試やテストを何度経験しても、やはり緊張している状況では、「ついうっかり」間違いパターンや計算のクセなどが出てしまうものです。模試や大きなテストを受けるときにはどうしても結果が気になってしまうものですが、大切なのは、「テスト中、自分が間違えやすいパターンの問題が出たらどこまで解けるかまずは取り組む」「どこで止まってしまったか覚えておく」「解き直し、復習をする際に、そのテストでやってしまった間違いパターンを重点的にチェックする」ことです。
解きっぱなしで点数ばかり気にしているようでは、いつまでたっても「間違いパターン」を克服することはできません。間違いパターンが見つかったときこそ、これから点数を伸ばしていける部分が見つかった、と発想を転換してみましょう。実際に間違えてみないと、原因を見つけることができません。これも今だからこそできることです。
模試やテストで間違えた問題は、実力をアップするための「宝物」です。どこまでできて、どこまでできなかったのか、どういうところでミスをしたのか、点数の伸びしろを見つけることができる貴重な材料です。解き直しや復習の際には、このようなことに注意して解いてみましょう。
解説を読んで、自分がいつもどのようなところでつまずいているのかがわかれば、そこを克服すれば良いわけですから、やみくもに問題を解くよりもずっと効率的に成績を上げることができます。また、その際、自分の考え方と違ったけれど答えはあっていた、という場合は、その考え方が正しいかどうか塾の先生などに聞くようにしましょう。違う解法もあるということを確認することによって、思考力の向上を実感することもできます。
模試や大きなテストに限らず、普段の学習時間や小テストのときにも、「間違いパターン」を意識するようにしましょう。問題を解きながら、「あ、これは自分がいつも引っかかるところだ」と分かるようになれば、克服までそう時間はかかりません。そのためにも、自分の間違いパターンを意識しておくことは大切です。自分から探すことができるようになるまで繰り返すことができるといいですね。
自分の「間違いパターンチェック表」を作ってみよう
もし、前も同じところで間違えたな、という自分の間違いパターンが見つかったら、それを紙に書きだしてみましょう。自分なりの「間違いパターンチェック表」を作るのです。新しいパターンが見つかったら書き足していきましょう。そして、勉強に取り組むときには、常に目に見えるところに貼っておくといいですね。
普段の学習の際にも「ここは間違えないようにしよう」という意識が芽生えますし、模試やテストの前にざっと見ておくことによって、冷静に問題に取り組むことができます。注意するという意識が働くので、ケアレスミスも減っていきます。
これは、算数だけに限らず、どの教科でも同じです。国語であれば「この漢字は間違えないようにしよう」「指示語や接続語に注意しよう」「大切そうな文には線を引こう」、社会であれば「並べ替え問題はこのように解こう」「この知識は出たら間違えないようにしよう」、理科なら「計算は落ち着いてまず式を立てよう」「そのためには問題文をきちんと読んでヒントを図に書き込もう」といった具合です。
もっと簡単に、「単位換算は間違えない!」「国語の抜き出し問題は写し間違えない!」など細かく、具体的なものでもよくわかっていいですね。
算数に限らず、全ての教科において、試験を受けるという緊張感、制限時間の中で、いかに落ち着いて冷静に問題に取り組むことができるかどうかが、普段の成績、最終的には入試の合否に直結します。何も対策を立てずにただたくさん問題を解くだけの勉強では、実力を発揮することができず、やったことがあって取れるはずの問題を取りこぼしてしまうことになります。それは本当にもったいないことです。特に入試は1点が合否を分けます。今のうちからそのように意識を持って勉強を勧めましょう。
まとめ
模試やテストの結果が返ってくると、どうしても結果偏差値や点数だけを見て一喜一憂してしまいがちです。ですが、本番はもっと先の入試です。入試を見すえて、いまの実力を冷静に分析しましょう。
「自分はどのような問題で間違いやすいから練習しよう」と、間違いパターンを意識しながら普段の勉強を進めていくことが、回り道のように見えて実は成績を上げる早道です。まずは、難しすぎる問題にこだわることよりも、「確実にとるべき問題を正解する」ことに意識を向けましょう。
基礎力をしっかり身につけるチャンスは今です。直前期になるとどうしても課題が多くなり、解けない問題が増えてきてスランプに陥ることも多くなり、克服しようと基礎を無視しようとしてしまう受験生が毎年多くいらっしゃいます。そうなる前に、しっかり自分の今の基礎力を見直し、できているところ、できていないところをチェックして一つひとつ潰していきましょう。「間違いパターン」を克服できたら、チェック表に線を引いて消すだけでもお子さんのモチベーションは高まります。
ケアレスミスも、ミスはミス、減点の原因です。おろそかにせず、今のうちから撲滅するように勉強方法を工夫して着実に得点力をアップしていきましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。