【中学受験】保護者がおこなうべき準備と注意点その③精神的サポートと環境づくり

前回まで、2回に分けて、保護者がおこなうべき準備と注意点として、学習計画の立て方と、情報収集の大切さについてお伝えしてきました。

これまでも、受験生のお子さんをお持ちの保護者の方は、折に触れて、お子さんの精神的なサポートをされてきたと思います。ご家庭によって優先すべきサポートはさまざまですが、必ず念頭に置くべきことは、中学受験生は小学生であること、精神的にもまだ未熟であるということです。中学受験は長丁場です。その中で、お子さんはときには不安を抱え、ときには成績がよくて思い切り喜んだり、という精神的なアップダウンを経験します。

ですが、中には思うような成績がとれなくて落ち込むことも多いと思います。そのようなときに、保護者の方々は、お子さんにどのように声掛けをしていらっしゃるでしょうか。成績だけが気になってしまって、「なんでこんな点数しか取れないの!」と責めたりしていませんか?お子さんの年齢が高ければ、自分で考えて克服しなければ、という気持ちにもなることができる場合もありますが、小学生には、まず難しいハードルです。

学習に対するお子さんの態度がよくない場合には、ときにはじっくり話をし、注意することはとても大切なことです。ですが、思うようにお子さんが勉強しないから、テストでいい点数をとってこないから、という理由で一方的にしかりつけることはやってはいけないNG行動です。受験が差し迫ってくると思うと、親御さんもどうしても「このままで大丈夫なのではないか」「わが子には受験生という自覚がないのではないか」と感じて、きついことばをかけてしまうケースがとても多いのです。

ですが、長丁場の受験勉強を乗り切るためには、お子さんの精神的な安定が何よりも大切です。もちろん、調子に乗ってやるべきことをやらない場合は、叱ることも必要です。ですが、お子さんが「なぜ叱られているのか」理解できなければ、いくら親御さんが頭にきて言いたいことをぶつけても、お子さんの心には残りません。かえって、「大切なことを聞き流す」という良くない習慣がついてしまいます。

今回は、親御さんが中学受験に向けておこなうべき準備と注意点について、ずばり「親御さんにしかできないサポート」を書いていきたいと思います。

お子さんへの精神的なサポートは何よりも優先すべきこと

中学受験は一生に一度しかない特殊な受験です。だからこそ、お子さんは毎日のように塾に通い、親御さんもなんとかそれを支えて、受験当日を迎えたいと思っていらっしゃるはずです。

ですが、お子さんの勉強に対する姿勢を見て、思わず厳しいことばをかけたり、傷つけてしまったりしていませんか?

お子さんの精神的ケアは親御さんにしかできないサポート

受験生のお子さんをお持ちの親御さんから見て、お子さんの日々の生活はいかがでしょうか。黙々と自分から受験勉強に向かい、問題なくテストでも点数をとることができているから安心している、あるいはなかなか成績が上がらず、普段の家庭学習はおろか、塾の授業をしっかり聞いてきているのかどうかもわからない・・・お子さんによって、現状はさまざまだと思います。

大人から見ると当たり前に思えるかもしれない中学受験の勉強は、お子さんにとってはストレスとなることも多いです。放課後友達と遊びたいのに、習い事をあきらめたくないのに、でも最優先しなければならないのは受験勉強、そう思うと、よほど勉強が好きで黙々と学習をすすめられるお子さんでない限り、日々の生活がつらい、と思うお子さんも少なくありません。

ご家庭の中で親子でよく話し合って、「あの学校を目指したい」「だから塾でこのように頑張る」とお子さんが口にしたとしても、100%額面通りに受け取ることはできないと思っておいた方がよいでしょう。1回約束したからと言って、長丁場の中学受験までの長い期間の間中、幼いお子さんが常に強気で受験勉強を続けていくことは非常に難しいことです。どのようなお子さんでも、必ず中だるみの時期がやってきます。また、それが普通のことです。

特に、一生懸命毎日塾で勉強して、宿題もやっているのに、成績が上がらない、勉強の成果が出ない、模試やテストの結果が思うように出ない・・・そのようなことは成績上位生でも往々にして起こることです。まして、なかなか思うように成績が上がらない時期が長い、クラスも下がる方が多い、というような場合は、親御さんも落ち込むことでしょう。「どうしてしっかり勉強できないの」「このままでは志望校合格なんてとんでもない!」などと、苛立ちから、つい強いことばを投げかけてお子さんにあたってしまっていませんか?

もちろん、お子さんの勉強に対する姿勢が悪く、少し注意したくらいではなかなか良くならない、机に向かっているとはいってもただぼーっとし時間がたつのを待っているだけ、そのようなときは注意し、親子で話し合うことも必要です。

ですが、ただ責めているだけで成績が上がるほど、お子さんは精神年齢が高いわけではありませんし、自分なりにどうしたらよいか途方にくれていることもあるのです。お子さんに対して叱りたくなるときは、お子さん自身も落ち込んでいることが多いということを忘れてはいけません。

そのようなときに、「何のためにお金をかけて塾に行っていると思っているの」「こんなんじゃ受かるわけない」「中学受験なんてやめてしまいなさい!そんな資格はない!」などと、お子さんの人格を否定するような発言を親御さんがしてしまうと、お子さんのモチベーションは下がるばかりで、結果が出ることもありません。

はっきり申し上げて、そのような声かけはまったくの逆効果なのです。なかなか成績が上がらない、志望校の入試に間に合うのだろうかと不安になるのは親御さんだけではなく、お子さんも同じです。そんなときこそ、親御さんはお子さんの支えになってあげなければなりません。

なぜ中学受験をすることにしたのか、初心に戻ろう

どうしてもお子さんが親御さんの思うとおりの行動をしないと、責めたり怒ったりしたくなりますよね。これは、中学受験にかかわらず、日常生活でも同じことです。

日常生活の中でのお子さんの行動も、中学受験には大きなかかわりがあります。毎日の日常生活を規則正しくおくること、また「いまやるべきこと」を優先順位をつけて実行していくことができていることが中学受験でも求められていることですから、中学受験生としての生活と、小学生としての学校生活、そしてご家庭での日常生活は、切っても切れない関係にあります。

ここで注意していただきたいことは、中学受験に関することは、日常生活とは関係ない、受験をするなら受験勉強をひたすらやっていればいい、と思わないでいただきたい、ということです。家庭で過ごす日常生活、学校で過ごす生活、そして塾で中学受験をするために過ごす時間、これらはすべて密接に関連していることなのです。

「とにかく中学受験に合格するために、塾の勉強だけやっていればいい」という考えだと、お子さんも苦しい状況に陥りますし、精神的なゆとりを持つことができなくなってしまいます。

たしかに、中学入試に合格するためには、入試で合格点をとらなければならないということが絶対条件ですから、その部分だけ切り取ってほかのこととは関係なく、何が何でも優先しなければならないと思われがちです。また、受験勉強のカリキュラムに一度乗ったら、そこから外れないようにということに気が行ってしまいがちです。

中学受験後のこともよく考えて

しかし、無事に中学に合格して、体も心も著しく成長する時期に、どのようにお子さんが成長していくか、という、「中学入試のその先」まで考える必要があること、そしてそのようなことは、親御さんがお子さんの性格や成長度合いに合わせて考えてあげる必要があることを忘れてはいけません。

この時期になると、受験生であるお子さんの、いまから中学入試までの道のりを具体的に考えるようになると思います。そのときにぜひ思い出していただきたいことは、「なぜわが子に中学受験をさせようと思ったのか」「中学受験に対して、ご家庭が何を求めているのか」ということです。

日々の受験勉強に追われていると、親御さんも余裕がなくなってくると思います。あれもやらなければ、これもやらなければ、とにかく成績を上げなくては・・・と追い詰められてしまうこともあるのではないかと思います。これは、お子さんの成績や志望校にかかわらず起こりうることです。

ですが、しっかりと成績をとっているのに、もっと上を、と漠然と親御さんに言われ足り、追い立てられると、成績最上位生のお子さんであっても不安にかられてしまいます。一生懸命頑張っても、褒めてもらえない、まだ足りないのか、とお子さん自身が自分を追い込んでしまうと、ある一定の時期から、「こんなに頑張っているのに認めてもらえない」という、自己承認欲求が満たされず、やる気をそがれてしまい、これまで順調に来た受験勉強が思うように進まなくなってしまうケースも多いのです。

親御さんがヒートアップするのは逆効果

ましてや、なかなか成績が伸びない、というお悩みを抱えているお子さんに関しては、さらに親御さんがヒートアップしてしまいます。「頑張りを認めてもらえない」という意味では、成績上位生のお子さんとも共通するのですが、このケースの場合、親御さんが「こんなに成績が悪いじゃないの!」と成績表、つまり数字を見せて、お子さんに「自分はダメなんだ」と思わせてしまうという非常に危険な行為に出てしまうことが多いのです。

一度傷ついたお子さんの心を癒し、再び頑張ってみようという向上心を再び取り戻すことは非常に難しいことです。特に幼いお子さんの場合はなおさらです。取り戻す方法がわからないわけですから。ですが、親御さんが一度口にしてしまったことばや態度は、お子さんの記憶に残り続けます。

親御さんにしっかり認識していただきたいことは、成績の高低にかかわらず、親御さんがお子さんに投げかけることばの「重み」そのものを、親御さんが認識しておくことがとても重要だということなのです。そのような認識なしに、そのときの感情に任せてお子さんに行ってしまったことばや、とった態度が取り返しのつかないことになりかねないからです。

親御さんがお子さんの中学受験に対して不安や苛立ちをかかえるのは当然のことです。中学受験は一生に1回の特殊な受験だからです。中学受験にうまくいかなかったら地元の公立中学校に通わなければならない、周囲の目が気になる、などいろいろときになることがあるでしょう。ですが、それは親御さんだけの問題ではありません。お子さんも同じです。お子さんも不安の中を泳ぎながら、日々の受験勉強にもがいているということを忘れないようにしていただきたいと思います。

ときには言いたいことがあっても、グッと我慢して、お子さんが気持ちを素直に話せるような体制を作り、お子さんがどう考えているのかよく聞いてあげてください。そして、お子さんの考えをまずしっかり受け止めてあげることが大切なことだということを、今一度認識していただきたいと思います。

それができるのは、いまの時期です。受験が近づくにつれ、また、夏期講習に入ると、じっくり親子で話す時間的余裕もなくなってきますし、親御さんにもそのような気持ちの余裕がなくなってきてしまうからです。だからこそ、この時期に、「なぜ中学受験をしようとしているのか」「どの学校に行って、何をしたいのか」という、本来、お子さんの中学受験を決めた目的を親子で共有しておくことがとても大切なのです。

お子さんの反抗期が重なったときは、第三者の力も借りて

中学受験生は、心身ともに成長の途中にあります。特に親御さんが頭を悩ませるのは「お子さんの反抗期」が重なったときではないでしょうか。

一から反抗期が始まるかについては、お子さんによって異なりますが、一般的に小学校4年生頃からは反抗期が始まることが多く、ちょど中学受験勉強をしている時期と重なります。中学受験を始めたときは特にそうではなかったけれども、学年が進むにつれて反抗期めいた言動がみられるようになることもあります。

しかし、反抗期は、お子さんの心身の成長において、避けて通れない時期だと言えます。親御さんにとっては、反抗期がない方が楽、と思われるかもしれませんが、お子さんの成長のうえで、自我が目覚めるきっかけの時期です。

全く中学受験の時期に反抗期がなかったとしても、年齢を重ねた先に反抗期がやってくることもあります。そのときには、お子さんの方が体格も体力も親御さんを上回り、手が付けられなくなることもあります。

お子さん一人ひとりによっていつ反抗期がやってくるかはさまざまですが、共通して言えることは、親御さんが勉強に関わること、成績について口を出すことを嫌がるのはもちろん、将来の受験や志望校について話すことすら拒否反応を起こすお子さんもいます。

中学受験の時期に反抗期が重なったから楽、というわけではありませんが、小学生の間は、まだ親御さんに対する信頼感がとても強い時期です。もし、中学受験とお子さんの反抗期が重なった場合には、できるだけ早くお子さんが出しているサインを汲み取り、一方的に怒るのではなく、親御さんとお子さんが話し合う機会を持つことが大切です。

親子で話し合ってみて、親御さんの話を聞こうとしないこともあると思います。あまりにも近しい存在だからこそです。そのような場合には、できるだけ早く塾や学校の先生に、家庭外でのお子さんの様子を聞き、家庭内の様子と比較して、家庭内だけでは解決できないようであれば、第三者の協力を求めることも必要です。

お子さんは、親御さんに反発しても、塾などの先生には本音を話すということはよくあります。受験と切っても切れない指導者だから、ということもありますが、塾に行くと反抗したくなる衝動が少しおさまるというお子さんは意外に多いものです。それであれば、親御さんの方から塾の担当の先生に連絡して、その日の様子や、これまでの経験に照らして、どのようにご家庭で親御さんが対処したらよいかを教えてもらうことがとても有用です。

「反抗期なんて恥ずかしい」そう思う親御さんがとても多いのですが、反抗期は恥ずべきものではありません。お子さんが成長していくうえでの一過程です。恥ずかしいから隠すのではなく、反抗期かもしれない、ではどう対処したらよいか、親御さんとしてお子さんにどのようなことばをかけたらよいか、アドバイスをもらうようにしましょう。

もし個別指導を受けている方は、お子さんの様子を、勉強している態度から読みとってもらい、その都度報告してもらうように連絡しておくことも有効な手段の一つです。集団塾では、親御さんが出向かない限り、お子さん一人ひとりに対して目が行き届きません。生徒数が多いのでどうしても限界があるのが現状です。こういうときに個別指導や家庭教師の先生の力を借りることも大切です。恥ずかしがる必要はありません。お子さんの成長のため、親御さんができることについてアドバイスをしてもらい、ご家庭でできることを相談して実行してみるようにしましょう。

家族がバラバラにならないために

お子さんの中学受験勉強中は、家族全員のありかたにも少なからず影響を与えます。特に、保護者どうしの場合には、受験までの時期が近付くにつれて、それまで一体となって、お子さんの受験や将来について何度もよく話し合ってきて意見が一致していたはずなのに、突然考え方が違う方向を向いてしまうこともよくあることです。受験に関わるのはお母さまが多いということも影響しているかもしれません。

受験勉強に関して、日々の学習の様子を見守ったり、塾との連絡を取るのはお母さまが多いと思います。塾の先生にこれができていないと指摘された、あれもやらなければ、これがまだ終わっていない、講習会はどうしよう、過去問は・・・そのような、受験のためにやらなければならないことを考えて頭に血がのぼってしまうのもお母さまであることが多いです。

ここで大切になってくるのが、お父さまのかかわり方です。最近は、両親ともフルタイムで働いて、残業も多く、お子さんが塾から帰ってきてもまだ親御さんがいらっしゃらずに一人、ということも少なくありませんが、受験に合わせてお母さまが仕事を調整してなるべく早くお帰りになることがまだ多いのが現状です。そうすると、お母さまからすると、「なんで私だけ」という気持ちになってしまうのも当然のことです。

お父さまの役割としては、勉強でわからないことを教えたり、お子さんがお休みになってから、お母さまと志望校をはじめ受験についての話をし、お子さんの現状を聞いて把握するということが一番大切だと言えるでしょう。お父さまも、役割分担をして、お子さんの中学受験に協力をしているという姿勢を示すことがとても大切です。

しかし、最近よく目にするのは、お母さまとお父さまの間でだんだん意見が食い違ってきて、大げんかになってしまうというご家庭が増えているという状況です。これは非常に難しいのですが、いくつかパターンがあります。

  1. 基本的には、お母さまにお子さんの受験対応は任せて、日々の様子を聞いて冷静にアドバイスする
  2. お母さまの受験に対する対応に不十分さを感じて、こうしたほうがいいのではないかなど意見をいう
  3. 意見がヒートアップしてしまい、お母さまと意見が食い違う
  4. 自分の中学受験経験から、お母さまの受験サポートを否定してしまう
  5. 意見が合わなくなり、お互い意地になって譲ろうとしない

ご家庭によって差はありますが、このようなステップを通って、親御さんの意見が食い違い、譲れないところまで来てしまって、最終的にはお子さんがお母さまとお父さまのどちらの方を向いたらいいのか、どちらの言うことを聞いたらよいのかわからなくなってしまう、というご家庭がとても増えています。

最近は、お父さまもお母さまも中学受験を経験されていて、ご自分の経験から、「こうしたほうがいい」という意見を双方お持ちのことが増えています。意見がが一致すればよいですが、食い違ってしまうと、場合によっては夫婦げんかに発展し、それがお子さんの受験勉強に悪影響を与えてしまうことがあります。

一番多いのは、お子さんがお父さま、お母さまのどちらの方向を向いたらよいのかわからなくなってしまって、どちらも困らせたくないという気持ちになってしまうことです。そのような状況にあると、中学受験で最も大切な、お子さん自身の中学受験に対するモチベーションが下がってしまうことになってしまう、ということです。

お子さんの受験へのモチベーションを第一に考えよう

ご家庭によって差はあると思いますが、本来中学受験をお決めになった決め手はどこにあったでしょうか?もちろん、自分が卒業した学校だからとか、そこで送った6年間が非常に有意義だったからぜひお子さんにも通わせたい、ということもあるでしょう。中学受験を経験していらっしゃらない親御さんの場合は、学区にある中学校と比べて、やはり良い教育を受けさせたい、という気持ちが中学受験を考え始めるときにはまずあったのではないでしょうか。

いろいろなご意見はあると思いますが、根本にあるのは、「お子さんにより良い教育を受けさせたい」「よりよい環境の中で切磋琢磨して成長してほしい」という、親御さんならではの想いがあってこそ、お子さんの中学受験を決められたのではないかと思います。

お子さんが毎日受験勉強を頑張っているのも、そのような親御さんの気持ちを受け止め、自分もあの学校に行きたい、という気持ちと同時に、親御さんの期待にこたえたい、という、ことばに出さなくてもそのような気持ちをもっているからです。

いろいろと悩み、苦しんだときには、中学受験を決めた根底にある、ご家族の気持ちに立ち戻りましょう。日々やらなければならないことがたくさんありすぎて、そのような余裕はない!という気持ち、とてもよくわかります。ですが、これから長いお子さんの将来を考えると、なぜ中学受験を決めたのか、という原点に、ことあるごとに立ち戻ることはとても大切です。

受験勉強に対する考え方や、思いのちょっとしたズレが、親子、あるいは親どうしの気持ちのズレとなって、溝ができてしまうことのないようにしたいものです。そのためには、できるだけこまめにご家庭内で話し合う機会を持つことが大切です。親は親の目線で、親子間ではお子さんの気持ちを引き出すことを意識して、夏休みや受験直前期、入試直前にもご家族が同じ方向を向いて受験に向かっていっていただきたいと思います。

きょうだいと比べることは禁物!

また、もし、お兄さんやお姉さんがいらっしゃって、中学受験を経験していらっしゃる場合は、親御さんがより冷静になることが必要です。「お兄ちゃんは何も言わなくても勉強したのに」「お姉ちゃんはあんなにいい学校に行ったのに、あなたはなぜこんな成績なの」といったような、「比べる」ようなことを受験生にぶつけることは禁物です。

お子さんも、お兄さんやお姉さんがどこの学校に通っていて、どういう学校生活を送っているかはよくわかっています。そして、それにあこがれて同じ学校を志望するという方も多いです。そのときに、「出来」を比べられてしまったらどういう想いをするでしょうか?親御さんは、そこまで考えて、受験生のお子さんの将来にとって最もよい選択をしてあげること、勉強の環境を整えてあげる必要があることを常に意識してください。

また、下に小さなお子さんがいらっしゃるときは、どうしても受験生と小さなお子さんの両方にまで手が回らない、ということもあると思います。どちらのストレスにもならないよう、時間を決めて、この時間帯は受験生のお子さんに、それ以外は下のお子さんに、というように、それぞれに集中してあげる時間を確保するようにしてみてください

中学受験は、お子さんの将来のためにとても大切な機会です。ですが、それによってご家庭がバラバラになってしまっては本末転倒です。受験生であるお子さんが一人で受験勉強全てをコントロールできない年代であるからこそ、親御さんの役割がとても重大になってくるのです。

勉強面のサポート

中学受験に限らず、本番に向けて授業を受け、知識を理解し、身につけ、問題を解いていくのは受験生本人です。受験学年になるまでの低学年の間は、親御さんが勉強面でも、一緒に知識を覚えたり、習ってきた解法でわからないところを家で一緒に問題を解き直すなどのサポートも可能ですが、学年が上がり、特に受験学年になると、お子さんが積み残してきたことを親御さんが手伝う、という、勉強面のサポートは難しくなってきます。

現に、いまの時期でも既に問題演習が中心の授業になっていることが多いですから、「この問題教えて」と言われても、すぐに教えてあげられる、という段階ではないかもしれません。これが、夏休み直前、夏期講習中ともなれば、親御さんがとることのできる時間のことを考えても、主体的にお子さんに勉強を教える、ということはまず難しいでしょう。

では、勉強の面で親御さんができるサポートとは何でしょうか?実際の学習そのものはお子さん、そして塾にお任せするのがこれからの時期は賢明です。毎回の授業で習ってくる内容は大量です。そして、この時期だからこそ、各教科の問題の「解き方」はある程度固めてかかる必要があります。

問題によって、解法を柔軟に変えるというテクニックもいずれ本格的に身につけていかなければいけませんが、それも理解し、使いこなせるようになるためには、お子さん自身が問題に正面から立ち向かわなければなりません。

親御さんができる勉強面のサポートとしては、学習計画を立てることとも関連しますが、お子さんが間違えやすい分野や単元を教科ごとに洗い出し、知識が足りないのか、問題によってとるべきオーソドックスな解法が身についていないのか、問題を解く際の姿勢を観察して、ミスしがちなところや解き方のクセをチェックすること、などが挙げられるでしょう。

覚えるべき知識を身につけ、問題を解いていくのは受験生本人ですが、採点や、どの分野や単元が弱点になっているのかという分析は親御さんでもできますし、むしろそれは受験生ご本人に任せるよりも良いでしょう。

受験までの時間が迫ってくるほど、お子さんはどうしても、「いい点数をとりたい」という気持ちが強いあまり、少々間違っていても正解にしてしまう傾向が出てきます。塾でも、「もう受験学年なので、〇つけも本人にやらせてください」「塾に任せてください」と言われることが増えるでしょう。ですが、受験生ご本人は〇にしたい、塾は集団授業ですから生徒全員の問題に対する取り組み方まではチェックしている余裕がない、したがって本当は×なのに〇だったということになってしまうのが本当のところです。

この状態を放置してしまうと、気づいたときには積み残しや、理解できていないことが克服できないままになってしまいます。それを一からやり直すには、非常に時間がかかります。ですから、できれば任せきりにするのではなく、受験生本人の採点に加え、親御さんも採点するという「二重チェック」をしたり、塾が宿題に対してどのようなコメントをしてくれているかをチェックする習慣をつけておくと、弱点の洗い出しに役立ちます。

このようにして、親御さんがお子さんの間違えやすいポイントや抜けている知識などを洗い出しておくと、今後やるべき勉強の内容、つまりつぶしていくべき弱点が明確になるので、その後の学習計画が立てやすくなります。勉強の方向性が定まれば、家でできることは家で、塾のアドバイスが必要なところは塾で聞き、それでも理解できないところは個別指導や家庭教師に的を絞ってみてもらうと、克服するための手段が見えてきます。

家庭学習のときは環境整備に気を配って

これからの時期は、塾で勉強してくる時間はもちろん増えてきますが、家庭学習の時間もより重要な意味を持つようになってきます。そのため、家庭学習の時間を確保することと、その中身を充実させることが必要です。

そのために親御さんが整備してあげることは、「家庭での勉強の環境」を整えてあげることです。一言でいうと、「集中して勉強する環境をつくる」ことです。

お子さんの性格にもよりますが、自室を与えて、実際の勉強の様子が見えないという環境では、「長時間部屋にこもっているのにいったい何をしているのか」ということにもなりかねません。日々長時間の勉強に追われているお子さんからしてみると、だれの目にも触れない自由な空間というのは、絶好の息抜きのチャンスだからです。

そのような場合には、リビングで、親御さんの目の届くところで家庭学習をおこなうようにしてみましょう。集中して勉強しているかどうかもそうですが、「いま、何を勉強しているのか」ということに注意してあげてください

お子さんはどうしても、自分の好きな教科や単元の勉強からやりたがります。ですが、やるべきことは、弱点克服のための学習です。もちろん、日々のカリキュラムにのっとった勉強も必要ですが、弱点克服のための「自分の勉強」をうまく採り入れていくことが必要です。

また、勉強の「やり方」にも気を配ってあげてください。今の時期、塾で習う内容も宿題の内容も高度になってきていますので、1問1問すいすい解ける、というわけではありません。中には算数の1問に30分かけているというケースもあります。入試本番の時間配分から考えれば、1問に30分かけられるはずはありません。

模試やテストで時間配分を意識する機会はありますが、家庭学習でもその意識をもって取り組むことはとても大切です。家でやっているからいくら時間をかけてもいい、という考え方をもっていては、入試本番はおろか、模試やテストでも点数がとれないのは当たり前です。

塾の先生と相談するなどして、「この家庭学習ならどのくらいを目安に切り上げて、解説を読んで理解する時間をとる」といった具体的な学習の進め方を決めて、それが実行できているかどうか気にしてあげましょう。

ただし、あまり頻繁に「いま何やっているの?」と言いすぎると、お子さんが緊張してしまい逆効果になってしまうことがあります。そのような場合は、たとえばどの教科であれば1問何分くらい鉛筆が動いていなければ声をかけよう、その際には声のかけ方も注意しよう、という意識を持って見守ってあげてください。

「今やっているのは〇〇だね、じゃあ、1問に〇分でやってみよう。先に進むために、〇分経ったら声をかけるから、そうしたら解説をしっかり読んで次に進もうね」といった具合です。

また、どこで学習するにしても、家庭学習の際には誘惑がつきものです。全く取り上げる必要はありませんが、「時間を守る」ことを親子で「約束」しましょう。具体的に約束するとお子さんはその約束を守ろうと努力します。

たとえば1日1時間、ゲームをやっていいと決めたなら、お子さんもその約束を守るべきですし、親御さんもその約束を守るべきです。「今日はこれだけしか勉強できていないじゃない、じゃあ明日はなし!」というように、感情に任せてせっかく約束した内容を親御さんの方が守らないケースもありますが、それでは約束をした意味がありません。

一度それをやってしまうと、お子さんは「約束は破ってもよいんだ」と思ってしまい、以後親御さんの言うことを聞かなくなるでしょう。よく話し合って、いまの学習の状況と、息抜きの時間のバランスを決めるようにしましょう。

周りの保護者との関係性にも注意は必要

中学受験では、いわゆる「ママ友」との関係性も、受験態勢を整える上では大切になってきます。もちろん、情報交換など、前向きな関係性であればよいのですが、中には、「探りを入れてくる」ママ友が多いのも、残念ですが事実です。

これがママどうしだけであればよいのですが、中には、ママ友がお子さんに声をかけてきて、「〇〇くんはどこを受けるの?」「あそこに受かるにはこんなに勉強しなければいけないんだよ」「来年の入試は難しくなるんだって」などと、お子さんに対して、保護者のいないところでマイナスイメージを与えるようなことを言う方もいらっしゃいます。

特に、お子さんどうしが同性の場合は、受験においては直接的なライバルになる可能性も高いので、「そんなことを言う人がいるの?」と思われるかもしれませんが、中学受験にのめりこみすぎてしまっている場合、間違った方向に誘導してしまうという方がいらっしゃるのも事実です。

特に、受験校の探り合いや、模試やテストの成績の比較は禁物です。お子さんのための受験なのですから、そのようなことを探り合ったり、ほかのお子さんの成績と自分のお子さんの成績を比べても意味はありません。そういったことにお子さんが巻き込まれないよう、注意してあげるようにしましょう。

経済的面のリサーチと準備も忘れずに

進学塾の費用はどのくらいかかる?

中学受験をお考えの場合、ほぼ皆さんが進学塾に通って受験勉強をするでしょう。少子化の影響もあり、進学塾もあの手この手で囲い込みを考えます。進学塾に通うことを考えたとき、真っ先に思い浮かぶのは「受験までにいったいいくらかかるのか」という費用面の問題でしょう。ご存知だと思いますが、本格的な中学受験の勉強は小学校3年生の2月(カリキュラムは小学校4年生)から始まるので、多くの方がこの時期に塾に通い始めます。

塾によっても違いはありますが、大手塾にかかる費用はおおむね4年生で年間50万円程度、5年生で70万円程度、6年生になるとオプション授業が一気に増えるので、100万円を超えることも珍しくありません。また、塾によっては毎月支払うところと、1学期分まとめて学期の初めに支払うところがあるので、いつ、いくら用意するかは大きな問題です。

6年生はオプション講座が増えるので年間の授業料が増えると述べましたが、これは、月々の月謝に加え、季節ごとの講習の時間が長く、講習期間もながくなるため、費用がかさむことも原因の一つです。さらに、志望校対策の講座を受ける場合には別に費用がかかります。

一般的に、5年生までは全国レベルの模試を受ける機会は少ないですが、6年生になると、そのような大規模な模試を受ける回数が増えますし、志望校別の模試も行われるので、ほぼ毎月のように模試を受けることになります。

これらのすべての費用を加えると、他の学年と比べて高額になるのは当然と言えば当然なのですが、学年が上がるにつれて費用が高くなること、いくらくらいになるのかは、塾ごとによく調べておきましょう。中・小規模な塾では6年生でも70万程度と大手塾より安いことが多いですが、それでも3年間通してみれば決して安くはない費用です。

個別指導や家庭教師を併用する場合

大手塾と、どうしても上位校に強いというイメージがありますし、実際に、上位校を目指す生徒さんを中心に考えたカリキュラムが組まれていることが多いです。したがって、大手塾に通う場合は、日々の授業についていくだけでも大変です。さらに、多くの宿題が出され、次の授業までにそれをやっていかなければならないという、小学生にとってはかなり厳しい学習サイクルになっています。

ですが、そのサイクルについていくこと、特に理解度を測り、家庭学習を確実におこなっていくことがとても大切です。そのため、特に大手塾にお通いのご家庭では、わからないところを克服するために、個別指導や家庭教師を併用するということも珍しくありません。親御さんが仕事で遅くなることが多い場合にも、個別指導をつけるという方もいらっしゃいますし、親御さんが対応しきれない教科や分野に絞って個別指導を受けるという方も多いです。

個別指導にもいろいろありますので、別の機会に詳しく利用法などをお伝えしたいと思いますが、指導してもらいたい内容、どのような講師がいるのか、その講師は中学受験についてよく知っているのか、ていねいな指導方法なのか、お子さんとの相性はどうか、などをよく比較して選ぶようにしましょう。週に何回頼むか、長期休暇のときだけ頼むのかによって、費用は大きく変わります。

中学受験の受験料や、入学手続き金の準備も忘れずに

受験勉強を始めたころは、塾の費用が一番気になるものですが、いざ入試を受ける段階でいくらかかるのかということもしっかりリサーチしておきましょう。

中学受験の出願時には、学校に受験料を納入します。学校によって違いますが、1校あたり2万円から3万円のところが多いです。中には、1回の出願で複数回受験する場合には、1回分の受験料ですべて受けられる学校もありますので、なるべく早く調べておくことをオススメします。

複数校受験することが多いと思いますから、全て出願したとして、また、受験結果によってさらに午後入試などを受けることを考えた場合も想定して、受験料がいくらになるか把握しておきましょう。そして、同時に、出願の締め切り日時も正確に把握しておきましょう。先に受けた学校の入試のあとでも出願が可能かどうか、最初からすべて出願しなければならないのか、ということもよくリサーチしておきましょう。

また、志望校に合格した場合、入学金を納める必要があります。これは学校によって差がありますが、安い学校で20万円台後半、高い学校で40万近いこともあります。1月受験校の場合は、2月受験校の結果が出るまで入学金を納めることを待ってくれる学校もあります。その場合は、延納手続きをとることもできるので、受験案内で調べたり、学校に問い合わせるなどしてよく調べておきましょう。

ですが、2月受験校の場合は、発表後早いところで1、2日後、おおむね3日から1週間以内には入学金を納めないと入学を取り消されてしまうことがあります。あまり時間的に余裕がないことも念頭に、どの学校はいつまでにいくら納入しなければいけないのかもしっかり把握しておきましょう。

大切なのは中学受験に対するご家庭の考え方

中学受験は、お子さんの成長と並行して進んでいきます。また、ご家族の絆を強くする場でもあります。お子さんがやるべきこと、親御さんがやるべきこと、できること、塾に任せるのはどの部分なのか、といったことをよく考えて役割分担をして進めていきましょう。

中学受験をお考えのご家庭にとって、何よりも大切なのは「中学受験に対するご家庭の考え方」です。最初によく考えずに、また情報収集をせずに、周りが受験するから・・・などという安易な理由で中学受験を考えると、「こんなはずじゃなかった」と戸惑うことになってしまいます。

そのような戸惑いが親御さんの中に生まれると、それをお子さんは敏感に察知します。お子さんは、親御さんを喜ばせたくて受験勉強をしているという子どもらしい部分を多分に持っているということを忘れないでください。そのためには、親御さんが「ぶれない」ことが重要です。

さまざまな第三者の手を借りても恥ずかしいことではありません。中学受験は、お子さんの幸せのためにするものです。親御さんも、わが子が将来どのような道を進むのか、期待を込めて中学受験を決心したと思います。

ご家庭の中学受験に対する考え方は、学年によって、また1年の時期によって変わってくることもあります。そのようなときも、中学受験に対する「ぶれない」気持ちを持っていれば、何を克服したらよいのか、ということが自然と見えてきます。

ぜひ、「ぶれずに」お子さんの将来をよく考えてあげてください。それができるのは親御さんだけですし、親御さんは厳しい受験勉強の中でお子さんを支え続けてあげるという重要な役割を担う存在です。誰かが勝手にやるものではなく、中学受験はご家庭が一丸となって取り組むものです。

もし、お子さんの状況によってどのように今後進めていったらよいか迷ったときは、受験に詳しい第三者に相談することも有効です。決してご家庭は孤独ではないことを忘れずに、これからの受験勉強に取り組んでいっていただきたいと思います。

おわりに

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。