長所もあれば短所もあることを理解しよう!日本の主要な3つの発電方法まとめ

本記事では資源とエネルギーに関する単元の中から,発電についてお話ししていきます。中学受験の地理といえば,工業地域のことだったり気候のことだったりが注目されがちです。しかし私たちの生活を支えてくれている資源やエネルギーについては,上で挙げた頻出範囲と同じぐらい対策が必須になります。また今回取りあげる発電は理科にもつながりますので,しっかり覚えておくことで周りと差がつけられることでしょう。

発電とは?

まずは発電とは何かについて抑えていきましょう。発電とは電気を生み出す仕組みのことを指します。私たちは日頃電気を使って生活しています。テレビを見るのもゲームをするのも電気がないとできませんよね。ここで使われる電気が発電所と呼ばれる場所で発電されて生み出されています。

日本でも明治時代に初めて火力発電所が誕生して以来,様々な種類の発電所が稼働されています。SoftBankによると,発電の方法は現在実験段階中の細かいものまでを合わせると数百種類にも及ぶそうです。今回の記事では,日本でこれまで使用されてきた3つの発電方法に焦点を絞ってその特徴をご紹介していきます。現在注目されている新しい発電方法については今後別の記事でまとめますので,そちらを参照してください。

主要な発電方法+メリットデメリット

ではここからは発電方法の詳しい中身について見ていこうと思います。それぞれに共通する要素をはじめにご紹介し,それぞれの方法のメリット・デメリットを抑えていきます。 言うまでもなく,メリットしかないものもデメリットしかないものも存在しないので,長所短所両方をセットで覚えることを意識しましょう。

発電の基本

まずは基本として,大まかな発電機の中身を知っておくといいでしょう。発電機の仕組みそのものが受験に登場するわけではありませんが,仕組みを理解しておくとメリットデメリットやそれぞれの方法の違いが分かりやすいのではないかと思います。

発電機の仕組みは実はモーターと同じです。小学校の理科の実験で乾電池とモーターをつないでプロペラやタイヤを回してみるという実験を行ったことはありませんか?このときモーターは,乾電池から送られた電気を使って回っていましたね。実は発電機と言うのはその逆を行っているだけなのです。発電機とはモーターを回すことで電気を生み出す,という仕組みで動いています。厳密にはモーターは電気を受けて回るものですので,タービンと呼ばれる違う機械が使われるのですが,それでも回すことで電気を生み出すという仕組みは変わりません。このタービンを回すのが水の力なのか,火で水を熱して得られる水蒸気なのか,などの違いがあるだけで基本の仕組みは変わりません。ぜひ覚えておくと良いでしょう。

水力発電

水力発電とは,水が高いところから低いところへ落ちるときの力を利用して,先述したタービンを回し,電気を産み出すというものです。一般的には山の上にダムを作って,そのために水をためて,水の量を調節することで勢いよく流していきます。私たちの住む日本では発電量の約9%がこの水力発電でまかなわれています。仕組みを図にまとめると以下のようになります。前述したタービンはここでは水車を指しています。(画像は中部電力からの引用です。)

水力発電のメリット

この水力発電のメリットは大きく2つあります。1つ目はエネルギーの変換効率が高いということです。エネルギーとは活動のもととなる力・ものを動かす力を指します。そして実は発電とは,このエネルギーを変換する作業のことなのです。今回は水の持つエネルギーを電気のエネルギーに変換していますね。一般的に水力以外の発電方法での変換効率は,どんなに高いものでも40~50%です。(中部電力を参照。) しかし水力発電ではなんと,水の持つエネルギーの80%が電気に生まれ変わっているのです。このことから無駄なく資源が使えていると言えますね。

2つ目のメリットは環境への影響が少ないということです。また後ほど触れますが,今回ご紹介する水力以外の2つの発電方法は,どれも環境に害があると考えられているものです。例えば火力発電では二酸化炭素が,原子力発電では放射性物質が発電の最中に生み出されてしまいます。二酸化炭素は長期的に地球温暖化をもたらす可能性が,放射性物質は人の生活に危害を加える可能性があるため,言ってしまえば水を高いところから落とすだけの水力発電は環境に優しいと言えます。

水力発電のデメリット

しかしそんな水力発電にも多少のデメリットが存在します。大きく分けて3つの短所が考えられるのですが,そのうちの1つが自然の破壊です。ここで「水力発電は環境に優しいのでは?」と思う人もいるかもしれませんが,環境に優しいのはその仕組みであって,発電所を作ること自体が自然に影響を与えてしまうのです。先ほど述べたように,水量発電所にはダムが必要です。そして高いところから水を落とさなければならない関係で,通常ダムは高い山の上に建てます。その過程で山を切り崩したり木を伐採したりと自然を破壊してしまうのです。またそこに住む動植物たちも当然住処がなくなってしまうので多大な被害を受けてしまいます。

また山の上にダムを建てるということに関連して,発電所を作る場所に限りがあるという問題もあります。火力発電所や原子力発電所は沿岸部であればほとんどどこにでも建てられると言えます。しかし山奥,そして十分に雨が降るところとなるとかなり場所が限られます。またそれに加えて大規模な設備が必要になるため,お金の面でもポンポン建てられないと言えます。その点山が多く雨がよく降る日本は水力発電に大変適している地形ではありますが,現在までで建設可能な場所のほとんどに発電所が作られているため,新たに建設することは難しいでしょう。

そして3つ目の短所が,天候によって大きく左右されるということです。タービンを回すのに水が使われるということは先ほど説明しましたが,この水とはダムで貯められた雨水のことです。そのため極端に雨が降らないとタービンを十分に回すことができず,発電できない可能性があります。また雨が降り過ぎてしまうのも問題があります。ダムが貯蔵できる水の量には限界がありますから,その限界を超えてしまった場合洪水が発生する恐れがあります。

火力発電

火力発電とは,燃料を燃やして水を熱することで発生する水蒸気の勢いを使ってタービンを回す発電方法を指します。燃料には石油や石炭といった化石燃料が使われます。この化石燃料については別の記事でまた詳しく取り上げる予定です。一般的には,タービンを回すのに使われた水蒸気は冷やして水に戻されて再度熱される,という循環が発電所内で行われています。この循環のためには冷却水が必要であるため,海のそばに発電所を建てて海水を冷却水として使います。仕組みを図にまとめると下図のようになります。(図は中部電力からの引用です。)

火力発電のメリット

火力発電のメリットとして以下の2つが挙げられます。1つ目の長所は場所を選ばないことです。火力発電は水力発電のように巨大なダムが必要なわけでも,後述する原子力発電所のように安全を確保するため人里離れた場所に建てる必要なわけでもありません。そのため火力発電の発電所は場所を選ばず作ることが可能です。

2つ目のメリットは安定して電力の供給ができるということです。先ほどご紹介した水力発電は雨の降る量によって大きな影響を受けますし,別の記事でご紹介する太陽光発電や風量発電も天候によって発電量が左右されてしまいます。しかし燃料を使用する火力発電は天気や気候の影響を受けません。またこのことは発電量を簡単に操作できるということにもつながります。天候に影響を受けない火力発電では,たくさん発電したい時期にはたくさん燃料を燃やせば良いですし,発電を抑えたいときには燃料を燃やし過ぎなければ良いのです。そのため人為的に発電量を調整できて無駄を抑えられるというわけですね。

火力発電のデメリット

しかし火力発電にも当然デメリットが存在します。その1つが温室効果ガスの排出です。以前森林の役割についての記事でもご紹介しましたが,温室効果ガスというのは二酸化炭素に代表される気体のことで,大気や地表を温める効果があります。石油や石炭といった化石燃料を熱することで排出されるのがこの温室効果ガスであるところの二酸化炭素です。したがって火力発電と言うのは地球に大きな影響を与える発電方法ということになります。

そして2つ目の短所が化石燃料に限りがあることです。先ほどから登場している化石燃料というものは,地球が長い時間をかけて作ってきたものです。それゆえなくなったらすぐに継ぎ足せるものではない化石燃料は,現在の使用ペースで使っているといつかは空になってしまうと言われています。最近持続可能な開発・SDGsという言葉を色々なところで聞きますが,将来の地球での生活を守っていくためには火力発電のあり方を考えなければいけないかもしれません。

そして最後に考えられる短所が公害の問題です。 先ほど化石燃料燃やすと二酸化炭素が排出されたと記述しましたが,その他にも硫黄酸化物・窒素酸化物といった大気を汚染する物質が発生します。これらの物質名は覚えなくても問題ありませんが,このような物質は酸性雨の原因となったり,ぜん息を引き起こしたりする原因となります。最近の火力発電所にはこのような有害物質を除去する設備が備わっており,環境にクリーンな発電が目指されているものの,たくさんの火力発電所が稼働していれば「塵も積もれば山となる」的に身体や生活,環境に大きな影響を与える可能性があります。

原子力発電

最後にも紹介するのが 原子力発電についてです。この原子力発電も火力発電と同じように高温高圧の蒸気を作り出してタービンを回します。火力発電と違うのは蒸気がどうやって作られているかということです。原子力発電では,石油や石炭を燃焼する代わりにウランという物質を使用し,そのウランで核分裂を起こします。核分裂とは,簡単にいってしまえば目で見えないほど小さな粒を2つに分ける,というような作業です。この核分裂の最中に大量の熱が放出され,その熱を使って水蒸気を作るというわけです。ウランそのものを燃やしているわけではない点に注意しておきましょう。そして原子力発電所でも火力発電所と同じように,タービンを回した水蒸気は冷やされて水になり再利用されます。それゆえ冷却水を必要としますので,発電所は海の近くに建設されます。仕組みを図にまとめると下のようになります。(図は中部電力からの引用です。)

原子力発電のメリット

原子力発電は近年デメリットばかりが取り上げられがちですが,ちゃんと原子力発電ならではのメリットも存在します。ここでは2つの長所を取り上げていきます。1つ目に挙げられる長所が安定して効率よく電気を生み出せるということです。火力発電のところで天気に影響されない上に燃料の量で発電を調整できると書きましたが,これと同じことが原子力発電でも言えます。核分裂に天候は関係ありませんし,ウランをどれくらい投入するかで発電の量が調整できます。またここは火力発電と異なる点なのですが,一度燃やしてしまったら二度と使えない石油や石炭と違って,使い終わったウランは再処理して再び使用することができます。加えて少量のウランでもたくさんの熱が得られることを踏まえると,安定して効率よく発電できると言えるわけです。

また2つ目のメリットとして,温室効果ガスを排出しないことが挙げられます。原子力発電では燃料が燃やされているわけではないので,二酸化炭素のように地球温暖化を促進することがありません。そのため温暖化対策の一つとして期待されています。

原子力発電のデメリット

メリットだけに注目すると,環境への影響も少なく効率が良い原子力発電は最も優れている方法のように思えるかもしれません。しかしその分原子力発電にもリスクやデメリットが存在します。その1つが発電に伴って生まれる放射性物質です。原子力発電は温室効果の面から見ればクリーンな発電方法だと言えますが,完全に自然に優しいわけではありません。原子力発電で生まれるこの放射性物質は毒性が強く,人間を含めた生物や土地に被害をもたらします。この物質は廃棄法が確定されておらず,また何万年規模で毒性が残り続けると言われているほど危ないものです。そのため現在どころか将来の地球まで脅かす可能性があります。

2つ目に考えられるデメリットは事故が起きたときの危険性です。原子力発電所で核分裂が行われるとき,熱だけでなく放射線も同時に生まれます。この放射線は病気の治療に使われたりする便利なものですが,大量に摂取すると生命に危険を及ぼします。もちろん原子力発電所では放射線が漏れ出さないように厳重な管理が行われていますが,地震などの不足の事態に陥ったとき,重大な事故につながる恐れがあります。実際このような事故が東日本大震災のときに起こりました。地震により福島の原子力発電所で事故が起こってしまい放射線が漏れ出てしまい,復旧が進んでいるものの未だに周辺地域に影響が残り続けています。この事故を受け日本でも反原発運動(原発=原子力発電所の略)が進んでいるのですが,このように原子力発電には万が一のときに危険性があることを覚えておいてください。

3つ目のデメリットは立地が限定されていることです。これと同じデメリットを水力発電の項目でも上げましたが,原子力発電所も同様に建設場所に制限があります。前述したように原子力発電所では発電の過程で放射線が生み出されます。発電所ではこの放射線が漏れ出さないように設備が設けられているのですが,それでもやはりごく少量とはいえ放射線が外に出てしまいます。そのため影響が及びにくいような土地かつ人が住んでいないところに立てなければならず,どうしても建てられる場所が限られてしまうのです。

ここまでのまとめ

それではここまででお教えした事項を表で整理しておきましょう。覚えて欲しい特徴を簡単にまとめると,エネルギー源・長所・短所の3つの要素になります。

最後に

今回は日本における主要な発電方法を3つご紹介し,それぞれのメリットとデメリットをお伝えしてきました。これら全ての情報を一気に覚えることは難しいでしょうが,まずはどれも一長一短ということを頭に入れてもらえると,今後の勉強も身になりやすいでしょう。よろしければおすすめ記事や参考テキストを活用し更なる学力向上を目指していきましょう。本記事が今後の学習のお役に立てば幸いです。

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参考文献

 

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