【中学受験】次の学年に向けて注意すべき学習ポイント~4年生・5年生

前回は、本格的に受験勉強が始まる前の低学年における、土台作りについてご紹介しました。今回は、受験カリキュラムが始まった4年生と5年生について、次の学年に向けて注意しておくべきポイントについて解説します。

受験勉強が本格的に始まると、どうしてもカリキュラムをこなすことに親子で必死になってしまい、今の状態がどうなのか、弱点はどこなのか、ということを振り返る余裕をなくしてしまうケースが多いです。ですが、学年が進むにつれてさらにスケジュールがタイトになるので、早いうちから振り返りを支、学習した内容を定着させていくことがとても大切です。

時間がないからできない、と思われがちですが、早めに準備をしておけば、時間の使い方もうまくなり、中だるみの時期もそれに応じた対処法をとることができます。

中学受験はお子さんの成長と並行して取り組むものです。だからこそ、お子さん一人ひとりの成長のスピードに合わせて、無理なく、ムラなく進めていくことがとても大切になってきます。そのためには、やはり保護者の方の観察力、サポート力が欠かせません。

現在4年生の場合、比較的カリキュラムには余裕がありますが、5年生に上がると扱う内容が非常に多く濃くなるので、そこで差がついてしまう可能性が高いです。また、5年生の場合は、いよいよ受験学年である6年生になり、受験までのカウントダウンが始まりますから、「何を、いつ、どれくらい」やるか計画立てて進めていくことがとても大切です。

学年によって異なる対処法ですが、特に気をつけるべき注意ポイントを今回は解説します。お子さんのご様子に合わせてぜひ参考にしてください。

4年生で大切なのは意欲を保つこと

4年生は、本格的な受験カリキュラムの1年目です。低学年のころから塾にお通いの方も多いでしょうが、それまでの学習内容と全く難易度や深さが違ってくるので、そのギャップに苦しむお子さんも少なくありません。そうすると、勉強自体が嫌になってしまい、受験をしようとご家庭で話し合って始めたとしても、だんだん積極的に学習に取り組むことが難しくなってしまいます。だからこそ、意欲を保ち続けることがとても大切だと言えるでしょう。

伸び悩みを感じたら、原因を早めに見つけよう

小学校4年生の後半ごろから中学校2年生、つまり10歳前後から14歳前後までは思春期前期と言われます。この期間にお子さんの脳の成長が著しく、論理的な思考力や物事の抽象化ができるようになり、感受性もよりおとなに近づいていてくる、発達著しい大切な時期です。

この時期に自主的に学習し、試行錯誤する習慣をつけることができると、中学受験だけでなく、その後の学習においても非常にスムーズです。4年生の後半から5年生にかけてはちょうどその思春期前期の入り口部分にあたる時期ですから、うまくその入り口にのせてあげることが必要になってきます。

お子さんは無意識ですから、保護者の方がうまく誘導してあげることも大切だと言えるでしょう。この時期に学習に集中する習慣ができればのちのち非常にスムーズになるのですが、気持ちのムラも大きくなったり自我が生まれてくるので、学習がスムーズにいかないケースも少なくありません。

学習がスムーズにいかない要因は?

学習がスムーズにいかない原因として考えられるのは、4年生の学習内容に比べて5年生の学習内容の範囲が非常に広くなり、内容も凝縮されるという点にあります。中学受験において一番重要な内容は5年生の間に学ぶと言っても過言ではありません。この学年をどのように過ごせたかどうかでその先の6年生の学習も異なってくるほどです。

内容が難しく、範囲も広くなるということは、学習時間を長くとらなければならないということに繋がります。つまり、5年生の学習は質量のバランスをしっかりとらないといけない、ということがポイントなのです。

また、内容が難しくなり、それをカリキュラム通りに進めていくということは、振り返りの時間をとりにくくなるということでもあります。時間に余裕がなくなってきて、自宅学習の時間も塾で出された宿題をやるので精一杯、弱点補強の時間など獲れない、という5年生は非常に多いです。振り返りができるかどうかが成績を分けるのですが、なかなかそれに取り組むことができません

そうすると、いつも同じところで間違える、ということが増えてしまい、教科、分野、単元に苦手なものが出てしまいます。一度苦手意識を持ってしまうと、そこから目をそむけたくなるのは子どもも大人も同じですが、そこを補強しなければいけないとはわかってはいるものの、できないからつまらない、できるところだけやろう、と学習深度にムラが出てしまうので、成績が乱高下してしまう原因になります。

また、勉強にかける時間が長くなるため、習い事をしている場合は習い事とどのように両立していくか考えたり、両立するためには時間の使い方がとても重要になってきます。

人間関係も学習に影響する

自我が芽生えてくる10歳前後は、他人との比較を始める時期でもあります。学校でもいじめ問題は絶えませんが、最近ではいじめが発生する学年が低学年化しています。自分と他人を比較し、自分と違う他社に対して非寛容的になってしまうのもこの時期です。

なかには、塾でいじめが横行するケースもあります。そうすると勉強に集中するどころではなくなりますよね。人間関係の問題は、心配事や不安を生み出し、勉強が手につかない原因になってしまうので早期に対処することが必要です。特に5年生という、受験において非常に重要な時期なので、勉強に対するお子さんの意欲が下がってしまうような問題が起きていないか目配りをすることが保護者の大切な役割だと言えるでしょう。

学習計画はこまめにブラッシュアップ

4年生から5年生に進むと、学習内容が一気に難しくなるので、当然のことながら成績が安定しないということも出てきます。目安としては、全体的に平均点前後の成績が取れていればそれほど心配する必要はありません。ついていけているという状態だからです。

成績低下のサインを見逃さないで

ただし、成績が落ち続けている、という場合は早めに手を打つ必要があります。原因がどこにあるのか、何か1教科足を引っ張っているのか、それとも4教科全体的に成績が低迷しているのか、ある単元でつまずいているのか、といった原因を突き止めるようにしましょう。その結果によっては、学習法を変える必要が出てきますし、場合によってはお通いの塾が合っていない場合もあります。集団塾が合っていないお子さんもいるので、その場合は個別指導を検討するのもひとつの方法です。

毎日の勉強に疲れてしまい、意欲が低下していることも考えられるので、その場合は、塾を1,2週間程度お休みすれば元気が回復することもあり得ます。十分休んで切り替えた後、集中して学習することによって成績が回復すれば、自信も回復します。

人間関係のトラブルが原因となっている場合もあるので、お子さんのようすを注意深く見守り、学校や塾ともなるべくコミュニケーションを密にとるようにして、深刻化する前に解決することが大切です。

学習計画は立てたら見直す

5年生からの学習は、カリキュラムを進めると同時に弱点を適宜見直していって穴をつくらないことが何よりも大切です。そのためには、月単位、週単位、1日単位といったように細分化しながら学習計画を立てて、それをしっかりやりきることが大切です。

ただし、学習計画は立ててやればいいというものではなく、週によっては「これはできるけれどこれはできない」ということも出てくるものです。その場合は、無理させるのではなく、できることをやりきることの方が大切です。特に月単位の計画は、それを週単位、日単位に落とし込んでいく基本なので、1、2か月程度で無理がないかどうか見直すことをおすすめします。

5年生は学習の継続こそが大切

5年生は、学習内容が急に難しくなり、前に一度出てきた単元でも深さがまったく異なります。そのため、成績が伸び悩むというお子さんも非常に増える時期です。成績が伸び悩むと「なんでできないの!」といいたくなるかもしれませんが、「これをやって、あれをやって、」といったようにお子さんをせかしてもいいことはあまりありません。

成績の改善は、性急にことを進めても思うようにいくとは限りませんし、かえってお子さんにとっては指示に従うだけの「やらされ勉強」になってしまい、成績を向上させる糸口をつかむことすら難しくなってしまいかねません。

そこで大切になるのが「継続する力」です。結果が出ないからといって責めすぎるとお子さんは学習意欲を失ってしまいます。だからこそ、継続することによって考える力、表現する力を伸ばしていくことが大切なのです。成果が出てくるのは6年生になってからなので、今のうちはひとつでも多くタネをまくようなイメージで学習を継続することを優先しましょう。無理させてしまい、お子さんがプッツンしてしまうと、元に戻すことは難しいです。継続が結果を生むという気持ちを保護者の方が持ち、お子さんにも「続けられて偉いね」という声掛けをして意欲を低下させずにモチベーションを上げていく環境を整えることを第一に考えてください。

目標は具体的に!志望校を意識する

ただ受験勉強をしなさい、といっても重い腰は上がりませんよね。それは、受験勉強をしたらどんなことが起こるのか、目標があいまいだからです。目標が具体的に見えていてこそ、日々の受験勉強を頑張ることができるのです。目標が漠然としていては、勉強していても不安な気持ちになってしまいます。

ですから、5年生の間にできるだけさまざまな学校の説明会に足を運んだりホームページで沿革や教育方針を調べたり、場合によってはお通いの上級生のお母さまにお話を聞くなどして学校をよく調べておきましょう

どの中学校を受験校にするかは、ご家庭の教育方針にもよりますが、やはり親子で納得して決めたいものです。そのため、お子さんと一緒に学校見学に足を運んだり、将来どのような職業を目指したいかなど、夢のある話を親子でして、目標となる学校をいくつかピックアップすることも大切です。最終的な受験校は6年生の秋ごろに決定していくことがほとんどですが、少なくとも目標である第一志望校については5年生の間に決めておき、具体的な目標を持つことでお子さんのモチベーションをアップしてあげる仕掛けをしてみましょう。

理科・社会は6割以上が現実目標

5年生になると理科・社会がグッと難しくなります。6年生前半までカリキュラムは進みますし、覚えなければどうしようもない部分もあるので、常に100%を目指すのはあまり現実的ではありません。

まずは、理科や社会の土台となる算数・国語でしっかり点数をとることを第一目標にして、理科や社会については最重要部分をしっかり理解し、定着させることに力を注ぎましょう。最重要部分をすべて理解していれば、おおむね6割がた点数が取れるはずです。難しい記述問題などはできなくて構いません。知識単体だけでなく、理由付けや知識と知識の因果関係など、流れを意識して学習を進めると良いでしょう。

ただし、現在の中学入試は4教科総合勝負ですから、穴を作ってはいけません。もちろんできてしまう弱点はありますが、それがどこなのかは常に意識し、埋める努力をしていきましょう。少なくとも苦手意識を持ってまったく勉強しない、という事態は避けなければなりません。

模試などで問題ごとの正答率が出ると思いますが、まずは正答率70%のものは確実に押さえましょう。そしてできれば50%以上のものについては単元ごとに押さえるようにしましょう。そうすれば、基礎基本が作れるので、その後の理科社会の学習がスムーズにおこなえます。

良い指導者との出会いが大切

5年生から6年生にかけては、学習内容が難しくなり、どうしても教科による波や弱点ができてしまいます。それはどの受験生でも同じなので必要以上に神経質になる必要はありません。

ただし、弱点補強をするためのセオリーを決めておくことは重要です。特に国語や算数については、「どこからがわかっていないのかがわからない」状態になっている受験生が少なくありません。その状態のまま入試直前期まで行ってしまうと理解度が不十分なまま不安を抱えて受験することになってしまいます。

そのような事態にならないためにも、「自分だけの先生」を見つけておきましょう。具体的に言うと、個別指導塾や家庭教師といった、「自分に合わせた方法で疑問を解消してくれる指導者」を見つけておくことが大切です。

集団塾ではどうしてもカリキュラムを前へ前へと進めることが重視されるので、わからないところがあれば置いていかれてしまい、振り返る余裕もありません。ですが、それでは土台が崩れてしまい、安定した成績をとることは難しいでしょう。

だからこそ、自分の理解度に合わせて、対話をしながら疑問を解決してくれるような個別指導を適宜取り入れることもとても大切です。わからないところが質問で来て、うまく誘導して解けるようにしてもらえる、理解度に合わせた解説をしてもらえることは「わかる」「できる」というステップを踏むうえでとても大切です。

お子さんの成績を見て、同じような問題で間違えている場合には特に力を発揮してくれます。お子さんとよく話し合い、弱点となっているところをしっかり洗い出しましょう。その上で、自分の理解度に合わせて疑問を解消していくことが大切です。

5年生の1年間は、目標や課題をできるだけ明確にして学習を進めることがとても大切です。塾や個別指導、家庭教師の先生、小学校、志望校に通っているお子さんをお持ちの保護者の方など、いろいろな方から情報を収集し、学校や塾、家庭教師の先生、先輩保護者など、周囲のかたと話し合いながら、そして何よりも親子のコミュニケーションによって課題を整理して、計画立てて学習を進めていきましょう。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。