ろ過 ~水溶液の物質を分けている仕組みや、ろ過操作における注意点とその理由について学ぼう~

 化学実験において,物質と物質を分けるための分離操作の1つに「ろ過」があります.

ろ過は小学校理科から習う一見単純な操作ではありますが,実際に幅広く利用される手法であり,かつ様々な形へ応用されて用いられています.

ここでは「ろ過」という実験操作の手順や操作,その原理や意味について,実際の入試問題も活用しながら学習していきましょう.

ろ過

 物質が混ざった水には「透明なもの」と「にごったもの」があります.

例えば砂糖水やBTB溶液を入れた水溶液などは色が付いていても透明であり,透き通っていて反対側が見えます.

一方で牛乳や泥水,石灰水などはにごっているためそれらをコップに入れてのぞいたとしても反対側は全く見えません.

 「透明な水」と「にごっている水」の違いは何でしょうか.

それは簡単に言えば水の中にある物質が「溶けているか」,「溶けていないか」です.

物質は溶けると細かくなって目に見えなくなりますが,溶けていない物質は粒が大きく,目に見えている状態なので水全体に拡散すると視界をさえぎってにごっているように見えるのです.

 透明な水の中には大抵溶けていない物質はないでしょうが,にごった水の中には水に溶けていない物質と同時に,水に溶けて見えなくなっている物質もあるかもしれません.

どうにかして「水に溶けている物質」と「水に溶けていない物質」を分けられないでしょうか.

 にごった水を「ろ紙」と呼ばれる紙に通すと,固体がろ紙の上に残って,透明な水がろ紙を通過して出てきます. こうすることで「溶けないで水の中に散らばっている物質」と,「溶けて見えなくなっている物質」を分離することができます.

 このように「溶液をろ紙に通すことで,溶けていない固体と水に溶けている物質に分けること」を「ろ過」と言います.

 ろ過の詳しい原理は後で詳しく書きますが,まずは実験の中でどのようにろ過を行うのか,その手順を簡単に見ていきましょう.

ろ過の手順

①ろ紙を折ってろうとに入れる

 まずはろうとに合ったろ紙を選び,4つに折ります. そして折ったろ紙を円錐形に開き,ろうとに入れて,水をつけて密着させます.

ろ紙の正しい折り方

②ろ過装置を組み立てる

 まずろ紙をつけたろうとをろうと台にのせます.

 そして,ろうとのあしのとがったほうがビーカーの壁につくように,ビーカーを置きます.

③ろうとへ液体をそそぐ

 ろ過したい液体を,ガラス棒に伝わらせながら,少しずつろ紙に注ぎます.

ろ紙の液体が全てビーカーに落ちたら,ろ過完了です.

ろうとへ液体をそそぐ

ろ過のしくみ

 ろ紙は簡単に言えば「溶けてない物質」と「水(溶媒)とそこに溶けている物質(溶質)」を分ける手法です. この2つを分ける要素は何でしょうか.

それは「粒の大きさ」です.

実はろ紙には目には見えないくらいの小さな穴が空いています.

ろ紙にそそいだ液体において,ろ紙の穴より小さい粒の物質がろ紙を通過してビーカーに流れ,ろ紙の穴より大きい粒の物質はろ紙の上に残ります.

つまり子どもが公園の砂場で遊ぶようなふるいと同じです. 粒の小さい泥や砂は下に落ちていきますが,大きい小石はふるいの上に残りますよね.

水や,そこに溶けている物質は非常に小さい粒でできていますが,水に溶けていない物質はかなり大きい粒のままなので,この違いを利用して溶けている物質と溶けていない物質を分けることができるのです.

ろ過の注意点

①固体はあらかじめ沈めておく

 ろ過する溶液は,あらかじめしばらく静置して固体を沈殿させてから,上澄み液(水に溶けてない固体が混ざっていない部分)からろ過を始めると良いです.

こうすることでろ紙に流れる固体の量を少なくすることができます.

 液体の中に固体が拡散した状態のまま,液体をろ紙に注ぐと,多くの固体がろ紙に流れてしまいます.

固体が多くろ紙に流れた結果,大きな粒がろ紙の穴をふさいでしまうと,水などの粒の小さい物質が通過しにくくなり,ろ過にかかる時間が長くなってしまいます.

②液体をろうとに注ぐとき,ガラス棒を伝わせる

 液体をろうとに注ぐときに,ビーカーの先をガラス棒につけて,そしてガラス棒をろ紙につけた状態でゆっくり液体を注ぎます.

これはろ過したい液体が周囲に飛び散らないようにするためです.

③ろ過する液体はろ紙の8分目の高さよりは入れない

 ろ過したい液体をろうとへ注いでいくと,そそぐ速さによっては,ろうとに液体がたまっていきますが,このときろ紙の高さの8分目の高さを超えないようにしましょう.

これはろ紙から液体があふれるのを防ぐためです.

ろ紙を水で密着させているとはいえ,ろ紙から液体があふれると,ろうととろ紙の間に液体が流れ込み,ろ紙を通過しないで直接ビーカーへ流れていくため,溶けていない物質をうまく分離することができません.

④ろうとの先はとがった方をビーカーの壁につけておく

 ろうとの先は,長くとがっている方がビーカーの壁に付いた状態でろ過を行うようにしましょう.

この理由としては,ろ液が跳ねないようにするためと,ろ液が絶え間なく流れ落ちるようにして,ろ過速度を大きくするためです.

ろ過の応用

 上に挙げたような通常の方法では,ろ過がしにくかったり,ろ過に時間がかかったり,うまく分離できない場合があります. それを解消するために,上の装置に加えて様々な工夫をしたろ過の応用形があります.

 例えば,ろ過の効率を上げるために外側から圧力を加えたり,ろうとの下の方を密閉空間にして出てくる方の圧力を下げたりすることもあります.

 また物質によってはろ紙ではなく,フィルターを用いたり,板を用いたりして,それらを通すことでろ過を行う場合があります.

 ろ過の応用型として「加圧ろ過」や「減圧ろ過」,「熱時ろ過」,「セライトろ過」などがあります. 実際の実験では目的に応じてこれらを用いることが多いです. 様々なろ過についてぜひ調べてみてください.

入試実践演習

 ここまで学んだことを活かして,実際の入試問題に挑戦してみましょう.

問題

実際の入試問題(浦和明の星女子中 2010)
入試問題問1の選択肢
入試問題問2・問3
入試問題問4・問5

解答

  • 問1 ア,ウ,エ,カ
  • 問2 ウ,オ,ケ
  • 問3 カ
  • 問4 26
  • 問5 ア,イ

解説

問1

ア:
ろ紙はろうとからはみ出ない大きさのものを使いましょう.

ろうとにうまく密着しなかったり,ろ過したい液体がろうとに対してどのくらいの高さでたまっているのかが分かりにくくなります.

 

ウ:
水でぬらすのはいいですが,ろ過する液でぬらすと,ろ紙からこぼれた分でうまく泥が分離できなかったりするのでろ過したい液はここでは使わないようにしましょう.

 

エ:
図のようにするとむしろ,ろ液が飛び散ります.

ろうとの先はとがっている方をビーカーの壁につけるようにしましょう. その方がろ液が飛び散らず,早く流れます.

 

カ:
ろ過したい液は図3のようにして入れるようにしましょう.

このとき液をこぼしたり飛び散ったりしないようになるべくガラス棒は動かさないようにしましょう.

 

問2

操作1より,泥がろ紙に残ったので泥はろ紙の穴を通り抜けることができません.

また,ろ過した後のろ液からはにおいがしたので,においのもとはろ紙を通り抜けています.

また活性炭は無数の穴が空いていて,そこににおいのもとなどを捕まえますが,活性炭を混ぜた後ろ過して得られたろ液はにおいがしなかったので,においのもとは活性炭の穴に捉えられていると考えられます.

つまりにおいのもとは活性炭より小さいです.

つまり次のような大きさの関係が成立します.

においのもと < ろ紙の穴 < 泥

においのもと < 活性炭

 

問3

ミョウバンの結晶は,正八面体のような構造をしています.

様々な物質の結晶の形はよく出題されるのでしっかり覚えるようにしましょう.

 

問4

ミョウバンは10℃の水に対して,水100gにつき4g溶けます.

今,操作4より操作3で得られたろ液には1g溶けていたことが分かります.

10℃に冷やした時点で溶けきれなくなったミョウバンが出てきており,操作3で得られたろ液はミョウバンの飽和水溶液です.

水100gに溶ける最大の量の1/4が溶けていたことになるので,水も100gの1/4の量があったと考えられます.

つまり水の重さは100÷4=25(g)

ミョウバンの重さと合わせて,操作3のろ液の重さは25+1=26g

 

問5

ア:
かごには穴が空いているが,これより大きいものが通らないようになっています.

イ:
ごみを外に出さないように,ごみより小さく,空気より大きい穴のフィルターがついています

ウ:
大きさで分けているのではなく,メールそのものの様々な要素で識別しています

エ:
光を弱めており,分けているわけではありません
(ある意味決まった向きの波を分けているとも言えるかもしれません)

オ:
赤色以外の光を吸収しています

カ:
磁性を利用して砂鉄のみを分離しています

キ:
沸点の違いを利用して分離しています

ク:
ある決まった構造をもつウイルスを取り除いています

まとめ……の前に

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まとめ

今回はろ過について、その仕組みから実際の手順、そしてろ過を扱った実際の入試問題まで幅広く扱いました。この記事一つでろ過のイロハを学習できるものになっていますので、何度も読み込んで理解を深めていってください!