今回の記事では図形のうち,かげと比という範囲に注目して解説を行っていきます。この図形のかげに関する問題は様々なテキストや色々な塾が重点を置いて解説しているところですが,初歩の部分は意外と省かれがちなので,対策を始めたばかりの人にとっては難しく感じやすい範囲だと言えます。それゆえ本記事を読みながら,導入部分から理解を深めていただけますと幸いです。
「かげと比」とは…?
まずかげと比とはどのような問題を指すのでしょうか。この問題は図形の単元で登場する文章題の一つです。まず当たり前のことですが,かげとは私たちが明るいところを歩いたりするときに壁や地面にできる暗い像のことですね。かげと比はこのことを応用して作られた問題のことで,何らかの棒や木や建物に光が当たっているときにできるかげの長さ・大きさを求めていったり,またはその数値から存在する物質の長さや大きさを逆算していったりする問題のことを指します。そして今回は取り扱わないのですが,この問題を解くために比の関係を使っていく必要があります。それゆえこの文章題が「かげと比」と呼ばれるわけですね。
2種類の影の存在を覚えよう!
ここからはかげと比について覚えておきたい2つの特徴について確認していきましょう。それは登場するかげの違いです。後ほど詳しく解説していきますが,かげと比の問題では光源の違いにより2パターンのかげが出来上がります。このパターンの違いを知らないと文章題を解く上で大きなミスにつながってしまうので,この基礎編では具体的な攻略法をお教えする前の知識として,かげの違いについて見ていきます。
① 点光源
まずは点光源です。これは道路の街灯だったり部屋のライトだったりといった明かりのことを指します。点と言われたときパッと普段目にする電球やライトのことをイメージする人は少ないでしょうが,算数の世界では太陽の光以外はすべてこの点光源に当てはまると考えてしまうといいでしょう。この点光源の一番の特徴は光が拡散していくということです。なんとなくイメージはつくかもしれませんが,光はその中心から広がっていくものです。

この性質があることから,点光源が登場する問題では実際に光が当たる部分と形の違うかげが出来上がります。例えば中学受験だと次のような図形が点光源にまつわる出題として登場してやすいです。この図を見るだけで四角形の物体なのに台形のかげができていることが一眼でわかりますよね。

このような問題はかげの違いを知らなくても解くことができますが,平行光線の場合だけ・点光源の場合だけしか勉強していないと,いざというときに習った解き方が使えないことに驚いてしまうでしょう。そのため本番で動じないためにも理解を深めていただけたら,と思います。
② 平行光線
続いては平行光線の考え方についてご紹介していきます。平行光線とは太陽を光源としたときの光の進み方を指すのですが,この場では太陽によって作られたかげにまつわる問題のパターンだと考えてしまうといいでしょう。先ほどの光源についての話で,光は光源から拡散されるように放射状に放たれるという説明をしましたね。太陽を光源としている場合でもこれは全く同じです。太陽も1つの光源ですので,宇宙に光を拡散しているわけです。しかしその大きさがとてつもないことと,地球からとんでもなく距離があることから,太陽からの光は地球に対して平行に進んでいくと一般的に考えます。このときの拡散か平行か,という差が受験対策をする上でも大切になるわけですね。

太陽からの光にはこのような性質があるため,出来上がるかげの形は光が当たっている部分の形と同じになります。ただしこのとき,太陽の角度などによってサイズは変わってしまうことに注意しましょう。このように全体で見たときの形は変わらずそれぞれの角度も同じであるのにサイズだけが違い,拡大または縮小したような関係になっている図形の組み合わせを相似の関係と言いますが,いまは出来上がるかげのパターンに違いに集中して覚えてしまいましょう。

些細な違いと思われるかもしれませんが,この前提知識がないと間違った形の面積を求めてしまいかねないので注意しておきましょう。ただしこれは上から眺めたときの話です。先ほどの図を見て「かげは長方形ではなくて平行四辺形では?」と思う人もいたでしょうが,物体とかげを見る角度によっては形が変わってしまいます。そのため説明がしやすいように,平行光線に関して登場するのは立体というよりも木のかげや電柱のかげといった直線で表せるものがメインとなります。とはいえ受験に登場する大多数の問題は平行光線によるかげに関するものなので,しっかり頭に入れておいてください。
終わりに
本記事ではこれまでかげと比という範囲に着目して,解く際に気をつけたい光源の違いというポイントについてご紹介していきました。今回の記事ではあくまで導入部分のみの説明にとどめましたが,応用編など入試問題をご紹介する機会も設ける予定ですので,よろしければそちらの記事も参考にしてみてください。本記事が今後の学習のお役に立てば幸いです。
(ライター:大舘)